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エビデンス入門(23)層別解析

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科

講師 竹田 竜嗣 氏

 機能性表示食品の事後チェック指針について取り上げられている内容を解説していく。今回は、「層別解析」について取り上げる。

 一般的に臨床試験などの層別解析というと、全被験者のなかで、特定の条件に当てはまるものだけを選別し、主要評価項目などを解析することで、全例解析では捉え切れなかったエビデンスを補完するために実施する解析を指す。

 例えば、男女別や特定の既往歴の有無など、被験者背景において主要評価について影響を与える因子を層別条件として定め、層別条件に当てはまる被験者のみを選別して評価する手法である。

 機能性表示食品の事後チェック指針では、軽症者のデータを使用できることがガイドラインに定められている場合を除き、「根拠論文の対象者の一部に疾病に罹患している者が含まれる場合に、適切な層別解析がなされず、疾病に罹患している者が除外できていない場合」には、科学的根拠としては不適とされている。機能性表示食品は、対象者が健常者であることから、疾病に罹患している者を除いた解析で評価する必要があるためである。

 「疾病に罹患している者」の定義は、実施した臨床試験の目的や主要評価項目によって考え方が変わる。体脂肪を低減する試験であれば、BMIだけでなく、血清脂質が高い被験者背景を持つ者は、高脂血症の確定診断が出ていなくても、病者と捉えられる可能性はある。そのため、表示しようとする機能性と関係の深い病態の診療ガイドラインを確認し、「疾病に罹患していない者」を被験者として選択することが重要である。

 また、血清尿酸の低減や血圧の低下効果など、ガイドラインには軽症者データの使用を認めている機能性領域もある。該当する領域では、解析方法もガイドラインに記述されているので、これらを把握し、適切な層別解析を実施することが必要である。

 機能性表示食品のガイドラインや事後チェックから少し話題はそれるが、層別解析は臨床試験論文でよく見かける。なかには、全体解析で主要評価に有意差が認められないために、後付けで実施したと考えられる例もある。一例としては、診療ガイドラインなどの科学的根拠がなく、被験者背景の一項目で、層別条件を決めて実施し、有意な差が認められたとしているものがある。
 
 このような解析を実施したいのならば、本来はプロトコールへの記載やUMINなどの臨床試験実施データベースに事前登録を行っておくことが望ましい。最近の海外雑誌では、査読時にUMINの登録内容と論文の評価項目を照らし合わせ、矛盾があれば理由を尋ねることや、論文の掲載を認めないRejectをする査読者もいる。

 たかが層別解析ではあるが、科学的根拠のない層別解析は、何のエビデンスも得られない不適切な事例と捉えられるため、注意が必要である。

(つづく)

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