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エビデンス入門(22)限定的な条件下による研究結果

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏

 
 今回は、「限定的な条件下によるヒト試験の研究結果の取り扱い」について解説する。
 機能性表示食品の対象者は、「疾病に罹患していない者」であり、特定保健用食品(トクホ)などで実績のある生活習慣病関連や、「機能性表示食品における軽症者データの取扱いに関する調査・検討事業」で示された尿酸値や鼻・目のアレルギー関連などに関しては、疾病者との境界域が設定されているために対象者の選択基準の設定は容易である。
 しかし、これら以外の疾病者との境界域が設定されていないヘルスクレームについては、健常者を対象に保健機能を調べることになるが、臨床試験を実施する場合は、健常者のなかでもヘルスクレームに関する自覚症状がある者を対象に実施されている。

 例えば、睡眠の質に関するヘルスクレームであれば、「眠りの質に不満のある健常者」などのように、臨床試験では被験者集団に一定の限定条件を付けるのが通常である。または、大豆イソフラボンの骨に関するヘルスクレームでは、研究対象者が閉経後の女性だけのように、一定の条件によって限定された集団に対して実施された研究結果である場合もある。
 このように、限定された被験者に対して実施された研究では、設定された被験者条件に対してのみ有効なエビデンスであり、広く一般化すること(限定条件を外して適用すること)は通常難しい。
 機能性表示食品の届出で考えると、最終製品を用いた臨床試験での実施の場合、著者が届出者と一致あるいは関係者であることがほとんどなので、限定条件を過大解釈して対象者を広げることはないと考えられる。しかし、研究レビューで届出をするケースでは、複数の論文が採用されている場合、いくつかの論文に限定的な被験者で実施した試験が含まれていることがある。

 例えば、被験者が「女子学生」だけの場合や、特殊な職業の集団で実施された結果である場合がある。こういった事象は、まずは少人数の集団でパイロット的にエビデンスを検証しようとする研究初期の探索的研究で多く使われる手法であり、本来はこの結果を踏まえて、対象者を広く設定して次の段階へ進むことが多い。

 研究レビューでこのような研究の論文も含めて評価する場合は、被験者集団の特性と、表示しようとする機能性の適用範囲について必ず考察しなければならない。また、考察の結果、一定の限定した条件の被験者に対してのみ有効なことが明らかである場合は、機能性表示食品の対象者や表示文言にその条件を加えた設定をしなければ、科学的根拠の過大解釈となる。

 論文では、著者が限定条件下での研究であると明記している場合もあるが、触れていないものの対象集団を見れば明らかに限定条件下での研究の場合もあるため、研究レビューを実施する者がしっかりと判断する必要がある。

(つづく)

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