エビデンス入門(20)主要アウトカムと副次アウトカム
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏
機能性表示食品の事後チェック指針について、「主要アウトカムと副次アウトカム」の解説を行うことにする。同制度では、なじみが深いリサーチクエスチョン(PICO)は、最終製品の臨床試験、研究レビューのいずれの届出でも設定するが、PICOのOはアウトカムであり、機能性表示文言と密接な関係がある。
また、アウトカムは主要アウトカムと副次アウトカムを設定することが多く、試験の目的に最も直接的に関係する指標を主要アウトカム、主要アウトカムを支持する補足的な内容や、主要アウトカムとは別視点から試験目的の有効性を検討する項目などを副次アウトカムに設定する。
このように、主要アウトカムと副次アウトカムは、関連性が深い項目で設定されることが多い。
例えば、長期的な血糖値の改善を評価する場合は、主要アウトカムはHbA1c、副次アウトカムは空腹時血糖値を多くの場合設定する。しかし、食後血糖値の上昇抑制を評価する場合は、食後血糖値の時間変化を測定し、血糖値上昇曲線下面積(AUC)が主要アウトカムになるというように、「血糖コントロール」が試験目的でもデザインごとに主要アウトカム、副次アウトカムは変化する。
主要アウトカムは一般的に1つのみを設定する。これは、統計学上の検定の多重性(検定を繰り返すことによる検出力(検定の質)の低下)を防ぐ観点から必要である。
また、主要アウトカムと副次アウトカムは主従の関係にあることから、主要アウトカムが有効(統計学的に有意)でない場合は、副次アウトカムがいくら有効であっても、PICOを満たしたとは言えず、副次アウトカムだけをピックアップして、結果を強調することはできない。つまり、主要アウトカムが有効でない時点で、副次アウトカムだけを取り出して論ずることは適切でない。
しかし、例外があり、多角的な観点を試験目的にしている場合、主要アウトカムが複数設定されることもある。この場合も、階層手順といって、主要アウトカムに優先順位を試験開始前に設定し、有意差検定を実施する方が望ましい。つまり、主要アウトカムが2つあり、A、Bの順に優先順位を設定したならば、Aが有意でなければBが有意でも試験目的は達成されていないと判断するのである。このように、主要アウトカムの検定の順番など合理的な手順を試験前に設定し、それらをUMIN登録などで明らかにしておくことが重要である。
事後チェック指針にもあるように主要アウトカムが複数の場合は、一部だけが有効な場合に、なぜ試験目的を達成できたと判断できるかを検定順番の事前設定なども踏まえ、適切に説明できるように試験開始前に宣言しておくことが重要である。
(つづく)