エビデンス入門(10)プラセボ対照試験におけるプラセボ
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科
講師 竹田 竜嗣 氏
試験実施における実務的な部分での留意事項について述べる。
機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)の有効性に関する臨床試験を実施する場合は、機能性関与成分や関与成分が実際に入った試験食品との比較対象として、「プラセボ」が設定される。プラセボの設定が困難な場合には、何も摂取させないなど無介入との比較を実施する場合もある。
この比較対照の設定は、「試験に参加する」という心理的影響により、観察しているアウトカムの測定値が変動するといったプラセボ効果が観察されることから、それらの影響を差し引いた上で試験を評価するために設定する。しかし、プラセボを設定するに当たってはさまざまな留意事項がある。
過去には、プラセボの設計が不適切であったために、試験の信頼性が十分に得られなかったなど、試験の成立を左右するような事態も起きている。今回は、臨床試験のプラセボ設定における注意点を挙げる。
まず、試験デザインで「二重盲検」、「単盲検」などの言葉があるように、「盲検」とデザインで指定されている場合は、試験参加者や試験の実施者が「誰に」、「試験品かプラセボのどちらか」を摂取させているのかがわからない状態を指す。二重であれば試験実施者と参加者の両者ともに、単盲検であれば試験実施者または参加者のいずれかが、わからない状態である。
機能性表示食品やトクホの場合は、多くが「二重盲検」である。以上のことから、試験品と対照品(プラセボ)は、見た目がわからない状態にする必要がある。試験参加者が摂取する食品から、どちらを摂取しているかについて想像が付いてしまうと盲検にならず、試験実施にバイアスがかかってしまうためである。外観、特に色などもできる限り似せて作ることが必要である。
また、外観だけでなく、機能性関与成分や関与成分の代わりになる成分にも注意が必要である。例えば、整腸作用を見るような成分であれば、プラセボには食物繊維質などの類似の効果が期待できるような成分は極力避けるといった配慮が必要となる。プラセボは単純に機能性関与成分や関与成分を含まないものではなく、評価するアウトカムへ影響しないものであると考える必要がある。
さらに、試験食品の剤型(飲料、錠剤、粉末など)も考慮し、機能性関与成分や関与成分の体内における作用を最大限発揮できるように設計することが、臨床試験で信頼性の高い結果を得る第一歩である。
(つづく)