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インタビュー~(一社)健康食品産業協議会 橋本正史会長に聞く(後)

<行政任せではダメ>

――これまでのお話ですと、事業者と行政の距離がだいぶ縮んだように感じますが、原因は何でしょうか?

橋本 過去に月に1度のペースで意見交換会を積み重ねていましたし、今はさらにコミュニケーションの機会が増えていると思います。私が見るかぎり、事業者が行政任せにするのではなく、できるだけ具体的な議論を自分たちで決めて、これでどうだという話の持って行き方をするようにしています。

――ただ単に行政を批判するのではなく?

橋本 なるだけ実現可能なところに持って行くためにはどうするか、ダメな原因は何か?と順序立てて深堀りしていくことが大切です。免疫機能の表示が好例ですね。免疫の何について話しているのかとか、どういう作用機序でそういうふうになるのかとか、せめて俎上に載るくらいのところまで組み立てた上で提案をするように消費者庁は期待していたはずです。ところが、事業者側の提案がそこまで論理立てて整理されていなかったため、たまたまダメだという思い込みだけが業界に広がったものと思われます。
 同じように、肌の弾力性や排尿をめぐる機能性についてもダメだと思い込まれていましたが、それはエビデンスについて議論しているグループが議論するようになり、届出に向けた準備ができたために公開に至ったと思います。

<分科会の活動 活発化>

――貴協会には7つの分科会があります。

橋本 現在、「ガイドライン分科会」、「有効性データと表示のあり方分科会」、「エビデンス向上分科会」、「食薬区分分科会」、「健康食品原材料・製品の製造・品質分科会」、「ビタミン・ミネラル分科会」、「公正競争規約分科会」の7つが活動しています。
 なかでも最も大きな分科会が「ガイドライン分科会」で、40~50人が参加し、月1回の頻度で会合を開いています。同分科会のリーダーは全分科会のリーダーも務めており、「事後チェック指針」が公表されたときにその解説書を作成しました。また、「機能性表示食品に関する質疑応答集」をめぐる指針、再届出の際の問題解決、消費者リテラシー向上に向けたアンケート調査など、多岐にわたる活動を担っています。
 各分科会への報告に基づき、分科会同士が横断的に議論を交わすなど、相乗・相互的な効果を生み出しています。5月の総会では各分科会の発表をリアル方式で行う予定です。

――ビタミン・ミネラル分科会はどういう活動を?

橋本 消費者庁と栄養機能食品の見直しを進めています。

――具体的には?

橋本 栄養機能食品制度の見直しについて意見書を出しているのですが、それだけでは済まないと思われましたので、具体的に業界側がどういうことを求めているのか、(表示や上限値に関する)変更点でむずかしいのはどういう点かなどについて、論点整理を行っています。
 ビタミン・ミネラル分科会のほかにも、「エビデンス向上分科会」はエビデンスレビューの評価チェックリストの検証結果をもとに、例えばシステマティック・レビュー(SR)のクオリティがどうかなどの議論をかなり細かく行っています。また、最近急速に大きくなっているのが「健康食品原材料・製品の製造・品質分科会」です。

<安全性の議論、CRNがけん引>

――(一社)日本栄養評議会(CRN JPAN)がリーダーを務めている分科会ですね。

橋本 はい。米国のダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)は、品質・安全性・エビデンスの3つが柱ですが、我が国でも機能性表示食品ではこの3つを大切にしなければならないという原則に戻った場合、安全性の議論は素通りできません。これまでは品質や製造の議論に重きを置いていた分科会に、原材料・受託加工メーカーを構成員とするCRN JPANや安全性のワーキンググループを持っている健康と食品懇話会などにも積極的に参加していただき、業界全体でサプリメントの安全性について考え方を整理するための意見交換会を今年初めて行いました。

――具体的には?

橋本 最終製品および原料についての安全性を網羅的に議論するには、かなり守備範囲が大きくなりますので、優先順位を決めて取り上げるべきテーマをまず決めましょうという段階です。

――(独)国民生活センターが2019年に行った商品テストでは、市販用サプリメント商品の4割以上で崩壊性に問題があることが明らかになりました。

橋本 こうした場合、業界側も言われっ放しではなく、きちんとした反論ができるようにするためには、テストをして実態を把握しなければならないのですが、そのためにもあらかじめ自分たちの考えを整理しておかないといけません。きちんとした意見を伝えられるように、製造・品質分科会のメンバーでミーティングを重ねています。

――JHNFAも独自に崩壊性試験のガイドライン作成に取り組んでいました。

橋本 そうですね。公正競争規約もそうですが、これまではJHNFAが独自で行ってきた歴史があるために、急には変えられないかもしれませんが、JHNFAの存在理由はそれとしてあるので、そこは大事にしながらも、崩壊性試験などについてはなるだけ協力しながらやっていこうという方向性にはなっています。過去のなごりがあるのは事実なので、それが課題の1つです。

<「構造改革連絡会」発足>

――分科会の活動は活発ですね。

橋本 はい、大変ありがたいことです。じつは「構造改革連絡会」というものも立ち上がっています。業界の各団体がやっていることをなるだけ1つの声にして、外に向けて発信していこうという試みから生まれたものです。
 先ほどの安全性についても同じなのですが、最終的には、大事なことをうまく広報していこうという目的で、これは産業協議会だけではできないことですから、(一財)バイオインダストリー協会(JBA)やJADMAや(一社)国際栄養食品協会(AIFN)などの協力も得ながら、積極的にステートメントを出していく方向で議論しています。

――業界も変わってきましたね。

橋本 変わりましたか?(笑) そうだとすれば、それはある日突然、行政が考えを変えたというわけではなくて、日頃から地道に活動している方々の努力が積み重なってのものだと思います。機能性表示食品制度に対する期待が後押ししている部分もあるでしょう。

――今後の展望について。

橋本 私は5月で2年の任期が切れます。5月に総会があるので、そこで信任がいただけるかどうか、続けろと言われればこれまでの延長線上で機能性表示食品制度を成長させるために、いろいろなステークホルダーの人たちと連携しながら、同制度の良さを伝えていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:田代 宏】

(了)

(冒頭の写真:橋本正史会長)

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