インタビュー「表示を考える」(3)
(公社)日本通信販売協会は、通信販売会社432社を傘下に置く業界団体。今年8月に、自主基準「通信販売広告における食品の表示に関する方針」を策定した。専務理事の万場徹氏に策定までの経緯、課題などについて話を聞いた。
賞味期限にタイムラグ
――このたび「通信販売広告における食品の表示に関する方針」を策定されました。その経緯をお聞かせください。
万場 広告を含めた食品の表示に関しては、農水省時代からさまざまな議論がなされてきました。食品表示法が消費者庁に移管され、2016年に「インターネットにおける食品の情報の提供の在り方懇談会」が開催され、さらに議論が行われました。そこで、通信販売の広告は食品表示法の規定の範囲外だが、消費者にとって重要な情報は表示した方がよいという報告書が作成されました。
当協会には、加工食品や生鮮食品などの一般の食品を扱う事業者も多く、もともと大半の事業者が、原料・原産地情報などを含めて消費者の商品選択に必要な情報は表示していました。
――コロナ禍で通販の表示トラブルが増加したとの話もあります。
万場 はい。当初は、表示内容に特段問題は無いという判断をしておりましたが、コロナ禍の巣ごもり需要で、ECで食品を購入する消費者が増え、十分な表示がされていないことによるトラブルが一部で見受けられるようになりました。
「業界団体としてどうあるべきか」と考えた結果、重要な情報は表示するということを視点に置き、食品を扱う事業者を中心にワーキンググループを組織し、検討を進めました。食品表示法では通販広告に法的規制があるわけではないため、あくまでも自主規制として、消費者の商品選択に資するためにどのような広告表示を行うべきかという指針を掲げたのです。
TPOに応じて対応
――通販ならではの問題点は?
万場 通販の場合、ラジオやテレビ、新聞、ネットなどのさまざまな媒体があり、媒体によっては時間や場所に制約があります。場合によっては、コールセンターやネット経由で消費者から問い合わせが来た場合に、しっかり回答できるように準備をしておく。アレルギー表示についても、消費者自身も注意しているはずですから、あらかじめ全てを表示できない場合には、不安に思った消費者からの問い合わせには対応できるように準備しておきましょうということです。協会に加盟していない通販事業者も数多く存在しますので、非会員企業を含めて全ての通販事業者に認知してもらいたいという思いから、情報は協会のホームページで公開しています。
――通販ならではの苦労は他にもありますか?
万場 消費者側に問題があるケースもあります。「写真と違う」、「食べておいしくないから返す」、「注文時は欲しかったが気が変わったのでキャンセルする」という実態があります。これは今、社会問題化している食品ロスにもつながります。通販に限らず飲食店などでもあり得ますが、写真と個人が感じるイメージが100%一致しているということは現実的ではありません。
ただし、賞味期限の表示に関しては少し考える余地があります。製造日から起算して賞味期限を定めたとしても、配送されて消費者の手に渡るまでのタイムラグがありますので、そのズレを消費者にどう理解してもらうか、どのような表現にするべきか、議論する必要があります。これを含め、今後出てくる問題点に合わせて議論を重ね、方針もブラッシュアップしていきます。
――ありがとうございました。
【聞き手・文:藤田 勇一】