アフィリエイト広告検討会を総括! (1)
景表法26条ありきの議論進む(前)
アフィリエイト広告の責任は広告主にある。2021年6月から22年1月まで6回にわたって消費者庁で行われた有識者会議「アフィリエイト広告等に関する検討会」(以下、検討会)において、アフィリエイト広告の責任の所在が明確にされた。景品表示法第26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置」の規定に基づき、夏ごろをめどにアフィリエイト広告に特化した指針が示されることになる。数回に分けて、検討会に出席した委員の見解も含めて紹介する。
急伸するアフィリエイト広告市場
検討会が設置されたのには、近年、アフィリエイト市場の著しい伸長に伴い、アフィリエイト広告による消費者被害が拡大したことが背景にある。
矢野経済研究所の調査によれば、アフィリエイト市場は2019年度で3,000億円に達し、20年度3,258億4,000万円(見込み)、22年度4,091億9,000万円(同)と急拡大している。アフィリエイト市場急伸の背景には、19年にテレビメディア広告費を抜き去り、2兆円規模に拡大したインターネット広告市場の広がりがある。
モバイル機器の普及が成長を後押し
年々増加するネット広告費を後押ししているのが、スマートフォンなどのモバイル機器の普及。パソコンからスマートフォンへ広告媒体が移行するにつれ、被害者はシニア層から若年層までの幅広い年代に広がりを見せている。
実際、(公社)日本通信販売協会の統計によれば、16年度までは929件に過ぎなかったモバイル広告に関する消費者相談が、20年度には2,000件を超え、パソコンやテレビカタログに関する広告相談の数をしのいでいる。
アフィリエイトは成果報酬型課金モデル
インターネット広告も初期の段階は、雑誌や新聞などの広告媒体と同様、広告主が代理店に発注し、プラットフォームに掲載される広告に対して決められた対価を払う。すなわち、媒体側が広告料金を決定する定額制の仕組みが取られていた。ところが、インターネット広告が普及する中で、視聴者がクリックした回数に対して課金されるクリック課金方式や、広告の目的に応じて報酬が支払われるコンバージョン方式の広告が増え、インターネット広告の複雑化が進行した。その過程で生まれたのがアフィリエイト広告という成果報酬型の広告システムである。
安価な広告を大量出向する傾向目立つ
参入障壁の低い通信販売業界では、初期費用が低額で済むことなどから、中小事業者やスタートアップ事業者なども手軽に利用できるメリットがあった。また、大手事業者にとっても、課金モデルはクリックされないことには広告費が発生しないことから、安価な広告を大量に出稿する傾向が目立つようになる。
アフィリエイト広告は成果報酬型の広告のため、虚偽誇大広告(不当表示)につながりやすいという問題は、検討会の論点としても挙げられていたが、実のところ問題はそう単純なものでもなさそうだ。インターネット広告は、広告業界の従来型の商習慣を打ち破り、アフィリエイト広告が一層手の込んだ広告システムを作り出し、今もなお進化し続けているのである。
アフィリエイト広告の商流は?
アフィリエイト広告の商流は、ASPがあらかじめアフィリエイターを募ってパートナー契約を締結する⇒広告主がASPに対して、こういう広告、プロモーションをしたいと依頼する⇒ASPがアフィリエイターにこういう案件があるけどどうか?通知する。⇒アフィリエイターが参加を申請する⇒アフィリエイターは広告主の商品・サービスに関するアフィリエイト広告を作成し、アフィリエイトサイト上に広告主のウェブサイトに遷移するリンクやバナーなどを表示する(アフィリエイトリンク)⇒アフィリエイターがアフィリエイト広告をブログなどに掲載し、必要に応じて媒体社にアフィリエイト広告へ誘導するための広告を出稿・掲載する⇒消費者がアフィリエイト広告を通じて、広告主のウェブサイトで商品・サービスを購入する⇒広告主がASPの設定した成果に応じてASPを経由してアフィリエイターに対して成功報酬を支払う。おおむね、このような流れである。
ただし、アフィリエイトサイトにも「ポイントサイト」、「口コミサイト」、「体験サイト」などのさまざまなコンテンツが存在し、「健康美容系」、「体験風記事」、「広告出稿型」と露出方法も多様。
(つづく)
【田代 宏】
(冒頭の写真:第5回アフィリエイト広告検討会)
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