アサヒカルピス「L-92乳酸菌」、暴走するウェブ広告(中)
<広告主は把握できる状況にあった>
効能効果を標ぼうした成分広告と、その成分を配合したサプリメントの広告を使い分けて掲載する行為は、関連法規上、どう判断されるのだろうか。
結論を言えば、両方の広告が一体であると認められれば、医薬品医療機器等法に抵触すると判断される。特に今回のように2つの広告主が同一企業である場合は、切り離して掲載していたとしても、サプリメントを販売するために2つの広告を展開したと判断される可能性が高い。
こうしたケースは、成分名と効能効果を消費者に刷り込み、商品購入に結び付けることを狙ったと考えるのが自然だ。偶発的に、2つの広告がたまたま表示されたのであれば、悪質性という点で話は違ってくるのかもしれないが…。
では、YAHOO!JAPANのトップ画面の大バナー広告で、広告主の意図に反して、たまたま成分広告と商品広告が同じ日に出てくることはあり得るのだろうか。
ヤフー(株)によると、トップ画面の大バナー広告については、広告主の企業は掲載日と、掲載される広告の内容を把握しているという。また、契約していない日に勝手に表示されることもないと明言する。「ただし、掲載のタイミングまではわからないと考えている」と説明している。
つまり、アサヒカルピスウェルネス(株)では、成分広告と商品広告が同じ日に、同じ大バナー広告として掲載されることを把握できる状況にあったことになる。
<都「指導の対象に該当」>
健康食品業界では、成分広告と商品広告によって消費者が両者を結び付けることを狙った脱法行為が散見される。最近では「L-92乳酸菌」の広告を真似て、他社でも効能効果を説明した成分広告を掲載するといった動きも出始めている。業界内では「ここ最近、乳酸菌の酷い広告が多い」という声が聞かれる。
取り締まり当局の考え方はどうか。東京都福祉保健局健康安全部薬務課に話を聞いたところ、一般論として次のような見解を示している。
「成分の効能効果の広告とその成分が入った商品の広告が出てくる場合、ある程度の時間を空けたとしても、消費者は2つの広告を見て1つのものであると思ってしまう。成分の広告を見た消費者は、その成分が入った商品の広告を見て、同じ効能効果があると思うだろう」。
「こうした手法の広告は、一体であるとみなされる。消費者に誤認を与えるという意味で、都では別々の広告と判断しない。指導の対象に該当する」。
都では、新聞紙面の上段で成分の効能効果を説明し、下段でその成分を配合した商品を広告したり、または雑誌の異なるページに2つの広告を掲載したりする場合と同様に、「別々の広告とは判断しない」と説明している。
(つづく)