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どうなる?2023年の健康食品業界 【記者座談会】激動の22年をふり返りながら記者が展望する(後)

プレスリリースは広告なのかどうか

A 9月の山田養蜂場に対する措置命令(景品表示法違反)も大きな出来事だったな。前年の11月、ウェルネスデイリーニュースに掲載した記事で問題視した新商品のプレスリリースが優良誤認表示とされた。

C 山田養蜂場は健康食品の販売大手。にもかかわらず、新型コロナに対する消費者の不安に付け込むかのようなプレスリリースを出した。健康食品業界全体に対する消費者の信頼を損ねたといえる。

B あれは確かに行きすぎだし、いくらビタミンDの血中濃度と新型コロナの重症化抑制に関する相関性などを報告する論文があるからといって、新型コロナに対する効果を無邪気に標ぼうしちゃった感じだよね。消費者庁の関係者も、大手があのような表示を行ったことに驚いていた。ただ、プレスリリースを違反対象とした消費者庁にも疑問を強く感じる。プレスリリースに顧客誘引性がないとは言えないけど、プレスリリースって広告かな? 純粋に研究成果などを発表するプレスリリースまで広告と言われたらたまらない。

C しかしあのプレスリリースには、当該商品ページに飛ばすQRコードまで表示されていた。こうなるとプレスリリースではなく、その商品の単なる広告宣伝だ。配信サービス会社を通じて配信されたプレスリリースも違反対象にされたが、ちゃんと内容を確認した上で配信したのか疑問に感じる。

B 厳しいご意見だけど、ごもっともかもね。特に、配信サービス会社を通じて配信される健康食品に関するプレスリリースの中には、「これ、どうなの?」と思わせる書きぶりのものもある。それに、昔と違って、インターネットを通じて報道関係者以外もプレスリリースに接することができるようになっている。だから今回の山田養蜂場に対する措置命令は、消費者庁からのメッセージだったのかもしれないな。「プレスリリースだからって行き過ぎはたいがいにしておけよ」って。

A 話は少し変わるけど、ステマ広告検討会の報告書の文末に次の記述がある。
 「ステルスマーケティングは、表示からは判断しにくいという特徴があるところ、規制の実効性を高めるため、景品表示法の供給主体又は責任主体の位置付けの見直しを行う場合には、不当表示を申告させやすくするよう、インフルエンサー等へのインセンティブ付け(独占禁止法におけるリニエンシー制度に類似した制度や報奨金制度)といった新たな制度や、ステルスマーケティングを含めた指定告示に対する課徴金制度の導入等を検討することも必要である」。
 もし、供給主体や責任主体の見直しが行われ、薬機法や健増法のように「何人(なんびと)」も規制するということになれば、広告などを掲載した媒体側も行政処分される可能性が出てくる。将来的には景表法にも「何人規制」が導入される可能性を視野に入れておく必要があるな。実際、検討会の中で座長は、「最終的に“何人も”まで行くことも検討に入れる」と発言していたぞ。

エビデンスの質、どう高めていくか

A 22年は本当に色んなことが起こったな。他にもオリックスのDHC買収や日本アムウェイが特商法違反で業務停止命令。それに、24年度を目途に厚労省の食品衛生基準行政が消費者庁に移管されるという話も持ち上がった。すでに両省庁間で具体的な検討を進めているようだから23年中に全体像が見えてきそうだ。日本健康食品認証制度協議会(JCAHF)の健康食品GMP認証をめぐる「6・6プレスリリースの怪」事件も起きた。GMP認証機関の日本健康・栄養食品協会と日本健康食品規格協会がJCAHFに提出していた質問書への回答が11月末にあったと聞いている。JCAHFのトーンはほとんど変わっていないようだ。

 機能性表示食品に関しては、民間団体での事前確認を経た届出に関して最終的に「ゼロ日」での公表を目指す考えを消費者庁が3月、正式に表明した。だが、その後、目立った動きがない。仕組み作りに難航しているようだ。

B いわゆる「ゼロ日ルール」は、消費者庁の伊藤前長官の肝煎り案件だったと言われている。未だにスタート出来ていないのは、6月に長官が代わったことが影響している可能性があると思う。新長官は必要性をあまり感じていないのかもね。ただ、民間を活用することで届出資料を確認する消費者庁の負担を減らすのが目的なわけで、これがうまくいかないと消費者庁の負担が増す一方。届出公開までの日数が増えてしまわないか心配だな。

 消費者庁は「検討を進めている」と言っている。今年度中に運用を始める考えに変わりはないようだ。本当に「ゼロ日」が可能なのかどうかが焦点だな。ただ、事業者が仕組みを活用するかどうか。この件についても事業者アンケートを行ったが、活用に後ろ向きの回答が目立っていた。

 事業者にとっては、いくら届出公開までの日数が大きく短縮される可能性があるとはいえ、新たなコストが生じることになる。届出実績があるものを事前確認の対象にするとも言っているから、事業者にとってどれだけメリットがあるのか疑問。運用が始まっても、しばらくは様子見になるのではないか。

 機能性表示食品に関しては他にも、表示する機能に関するエビデンスの質を問題視した『日経クロステック』の記事が業界にインパクトを与えたな。この指摘にどう向き合い、解決していくか、業界全体で考えてもらいたい。

B あの記事に対して僕は違和感があった。一部を取り上げて全体がダメだと言わんばかりの書きぶりが気になった。ただ、Aが言うとおり、機能性表示食品のエビデンスに関して外部から言いたい放題言われないようにするためにも、業界全体で考えていくべき。その中で健康食品の有効性評価方法に関する東京大学の唐木英明名誉教授の提言、プラセボ対照試験ではなく無処置対象試験こそが適しているという提言は、業界全体が目を見張るすべきだと思う。

 日経クロステックの記事がきっかけになって、唐木先生が「健康食品試験法研究会」を立ち上げた。今年、消費者庁へ問題提起を行うと聞いているが、機能性表示食品や制度が消費者にもっと信頼されるようになるきっかけになればいいと思っている。

(了)

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