1. HOME
  2. 一般食品
  3. どうなる食品添加物の不使用表示!?ガイドラインで一定の改善効果!(前)

どうなる食品添加物の不使用表示!?
ガイドラインで一定の改善効果!(前)

食品安全情報ネットワーク共同代表 小島 正美 氏

 消費者庁は昨年12月、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)を公表した。どんな表示が消費者に誤認や誤解を生じさせるかについて、10項目の類型が示された。ガイドラインのため、拘束力はないとはいえ、思った以上に手際よく整理され、適正な表示に向けて一定の効果は期待できそうだ。あとは事業者が誠意をもって、どこまで実行するかにかかっている。

食品表示基準に不使用表示の詳細規定なし

 この不使用表示の問題を考える上で、何が最大の課題かを改めて確認しておく必要がある。スーパーなどに並ぶ商品の容器包装には、単なる「無添加」から、「保存料無添加」、「化学調味料不使用」、「人工甘味料不使用」などの表示が横行している。食品衛生法に基づく食品表示基準では食品添加物の不使用表示に関する詳細な規定を設けていないため、事業者が勝手に不使用表示を行っているためだ。

 また、この無添加・不使用表示は、消費者に対して「添加物=危険」という誤ったリスク認知を与えていることも大きな課題だ。消費者庁のアンケート調査では、「無添加」や「○○不使用」の表示を見て、多くの消費者は「無添加のほうが安全で健康によいようにみえる」と考えていることが分かっている。もちろん、不使用だから安全という事実はないし、人工だから危険というわけでもない。

 言い換えると、無添加・不使用表示は、実際のものよりも優良だとの誤認を消費者に与えたり、商品の選択に誤解を生じさせているわけだ。そこで、無添加・不使用表示で誤認が生じないよう、消費者庁は2021年3月から、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」(座長・池戸重信宮城大学名誉教授、委員11人)で表示のあり方を検討してきた。その結果、昨年12月9日にガイドライン案が示された。

10項目の類型で不使用表示を規定

 検討会の委員の構成は、消費者代表が3人、事業者代表が5人、学者が座長を含めて2人、弁護士1人だ。事業者の多い構成や審議内容から見て、当初、筆者は無添加や不使用表示の現状を追認するような事業者に有利な案が出てくるのではと危惧したが、予想は外れた。
 消費者に誤認をもたらす不使用表示の例として、10項目の類型が示されたのだ。意外にうまく整理されていて感心する。どういう類型かを理解しやすくするため、以下に要約してみた。

類型1 単なる「無添加」の表示
類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
類型6 健康、安全と関連付ける表示
類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
類型10 過度に強調された表示

 現行の食品表示基準第9条は、消費者に優良誤認や内容物の誤認を起こす表示の禁止を規定しているが、具体的で詳細な規定はなかった。新たなガイドライン案は、誤認が生じる不使用表示の例を10項目の類型に分かりやすくまとめたわけだ。10項目の類型に重要度の差はなく、数字の順番と優先順位は無関係だという。

化学調味料はどの類型に該当するか

 では、この類型を活用して、実際に無添加表示がどうなるかを、化学調味料を例に考えてみる。
スーパーの棚では「化学調味料無添加」の表示は目立つ(冒頭の写真)。そもそもグルタミン酸(アミノ酸)を主成分とする化学調味料(今は「うまみ調味料」が正式な呼称)は、NHKが1960年代に味の素という商品名を使うことができないため、放送のためにあえて作ったマスコミ用語である。

 この化学調味料という用語は、消費者庁もガイドライン案で指摘しているように食品表示基準で使用されたことはない。しかも、人工、合成、化学、天然という用語を用いた食品添加物の表示は、優良または有利誤認を生じさせるとの理由ですでに禁止されている。
 これらのことを説明しているのが類型2である。つまり、食品表示基準の規定にない言葉を使えば、第9条違反だというのが類型2である。となれば、今後、事業者は「化学調味料無添加」という表示は使えなくなるはずだ。

化学調味料は類型5にも該当

 しかも、化学調味料の表示は類型5にも当てはまる。類型5は、原材料にアミノ酸を含む抽出物を使用しているのに、容器包装に「化学調味料を使っていない」という表示は消費者に誤認を与えると解説している。
 さらに言えば、化学調味料の表示は、筆者の見方では、類型6にも引っかかる。類型6は、無添加や不使用の表示が「体によい理由」や「安全であることの理由」に関連付けられる場合には、その表示を認めないという規定だ。グルタミン酸がさも健康に悪いかのように唱える管理栄養士が今なお存在するほどに化学調味料への誤解は強い。

 つまり、化学調味料の不使用表示は類型2・5・6に該当するだけでなく、そもそも化学調味料という言葉自体に正式な定義が存在しない以上、ガイドライン制定後は間違いなく「化学調味料不使用」という表示は許されなくなるはずだ。
 「はずだ」と書いたのは、ガイドラインの性格からいって、拘束力はなく、無添加表示をやめるかどうかは事業者の善意に頼るしかないという限界があるからだ。

(つづく)


(冒頭の写真:スーパーで目立つ化学調味料無添加の表示)

関連記事:ガイドラインで一定の改善効果(後)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ