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これからのカンナビノイドを語ろう(後) 【CBD座談会】サプリと医薬が共存する世界へ

 大麻草に含まれるカンナビノイドの一種、カンナビジオール(CBD)。大麻関連法規制の改正を受け、今後、医療の領域でも活用されていくことになる。
 原則として健康な人が使用するサプリメント等と、疾患を抱える患者のために用いる医薬品が共存する世界が日本でも生まれる。そうした新しい世界の中で、健康維持・増進(ヘルスケア)目的のCBD製品を製造・販売する事業者に求められることは何だろうか──。
 それぞれ異なる立場でカンナビノイドに関わる、松原仁代議士(衆院議員、無所属)、秋野公造参院議員(公明党)、柴田耕佑㈱ワンインチ代表取締役(CBD製品輸入販売事業者)の3人が語り合った。

 前中後編全3回のうち後編(最終回)。「健康な人を対象としたサプリメントなどの食品としてCBDなどのカンナビノイドを扱っている事業者が問題を起こすと、真にCBDを必要とする方が困ることになるということを知って欲しい」と秋野参院議員が訴えた場面から続く(中編参照)。

──サプリメントは健常者のためのものだと考えていました。だから正直、患者さんに目を向けたことはありませんでした

松原 今の秋野さんのお話を伺って認識を新たにするのは、CBD議連の役割とは、大麻に対するイメージをさらに悪くするような者がばっこすることがないようにする枠組みを国が先導して作る、そしてCBDを適切に活用できるようにして、健常者から患者まで生活の質を保てるようにする、そういうことではないでしょうか。

柴田 国内に現在流通しているCBDやカンナビノイドの製品数はおそらく500~600です。その中で、議連、厚労省、CBD業界団体、そして私たち事業者が考えなくてならないのは、例えば公正競争規約であったり、機能性表示であったり、つまり消費者から見て、どのCBD製品であれば、どのカンナビノイド製品であれば、安心して摂取できるのかを一目で分かるようにすることではないでしょうか。そのためのマーク、線引き、あるいはハードルが必要だろうと私は考えています。カンナビノイドを必要とする患者さん達としても、そうした目印があったほうが商品選択しやすいし、安心して摂取できるはずです。

秋野 そうですね。

柴田 要は、今回の機能性表示食品による健康被害と同じような問題を、CBD製品、あるいはカンナビノイド製品で起こさないようにするためにどうしていくべきなのかを考える必要がある、ということです。そのためにも、製品の安全性や品質の確保を事業者に丸投げするのではなく、このラインを越えている製品は安全なのだということを国として示していく必要があると強く考えています。

松原 おっしゃる通りです。ただ、そうした仕組みをどのように作るか、そもそも実効性のある仕組みを作ることが本当に出来るのか、そこはしっかり精査していく必要があろうと思う。仮に、そうしたマークを作ったとして、そのマークを付けた製品に問題が生じることも起こり得る。CBD製品の販売が先行している欧米では、大手メーカーが製品上の問題を起こしてしまったという事例もあるのではないか。

柴田 はい、実際に起こっています。ただ、CBDやカンナビノイドのサプリメントについては、欧米もまだまだ発展途上です。カンナビノイドに関する研究論文は日々更新されていますが、食品の分野での研究はまだまだ少ないのが実情です。ですから、日本は大麻政策で世界に遅れを取っているなどと言われていますが、欧米の先駆者たちの失敗や反省を生かすことで、世界の最先端に躍り出ることも出来ると思っています。日本という国は、それが出来る国だと私は信じています。原材料から最終製品までの安全性や品質を厳格に管理する仕組みだとか、サプリメントなど食品と医薬品を棲み分けつつ包括する仕組みだとかを国として構築できれば、世界的に見ても大きな先駆例になるはずです。

──柴田さんの意見をどう評価しますか?

秋野 何かしらの公的ルールは必要だと思いますが、社会の雰囲気というものも大事です。先ほど申し上げたように、健康な方が使うものであるというほうが市場も大きいし、ビジネスとしても儲かる。しかしそればかりでは患者さんが取り残されてしまう。そこを忘れてはいけないのです。法改正の際も、大麻の「使用罪が新設される」と大騒ぎになった。しかし「新設」ではない。もともと使用罪のある麻向法に大麻の規律を移す、麻向法の適用を受けるという話に過ぎないのです。真に大麻由来医薬品/薬物を必要とする患者は取り残されて、健康な方に視点を合わせて「使用罪の新設反対、法改正反対」と大声が上がった。いったい誰のために反対しているのか、と私は言いたかった。報道には猛省を促します。CBDオイルなどサプリに取り組まれていらっしゃる方には、どうか大麻取締法改正の立法事実を忘れないでほしいのです。まずは大麻由来医薬品/薬物または食品を真に必要とする患者さんに届ける。その上で健康な人たちのためにどうするか考えていくべきです。

柴田 秋野先生のおっしゃっていることは、大麻取締法の改正に反対するということは、患者さんたちの命を救うことに反対しているのと同じだ、ということですよね。

秋野 繰り返しになりますが、てんかんを伴う指定難病は120以上ある一方で、治験が行われたのは3疾患のみです。117以上の疾患の患者さんたちには届かない。だからサプリメントなどを通じてヘルスケアに関わる事業者が、そうした患者さんたちのためのことを考えてくださるかどうかが、柴田さんが考える今後の取り組みの成否を占うと思います。

──とはいえ、事業者が「患者さんのために」としてサプリメントを売ることは決して許されません。

秋野 そのとおりです。だからTHCも含め、治験を行うべきだと申し上げています。そのうえで、患者さんたちの生活の質を維持するために質の高いサプリメントの提供をお願いしたいです。自分たちはサプリメントを扱っているのだから医薬品のことは考えなくていいではなく、医薬品の動向を注視してほしいと思います。

松原 とても重要な指摘だと思いながら聞いていました。

 議連の今後の活動は、悪質な事業者が出てくることをいかにして防ぐか、そしてCBDという産業をいかに良いものに育てていくか、そこに重点が移っていくのではないかと思います。欧米の動向を見て、日本の大手企業の中にも、CBD製品を販売したいと考えているところもあるはずです。そうした企業が安心して参加していける環境をいかにして作っていくのかが非常に重要です。そのためにも、いまCBD製品を販売している事業者や業界団体は、自浄作用を働かせながら、業界の健全化に向けた活動を進めてもらう必要があると思います。

 しかしそうは言っても、故意ではなく過失で事故が生じることも考えられ得る。紅麹(機能性表示食品の健康被害)の問題も、故意に起こしたはずはないと思う。そうした過失の事故が生じるリスクをいかに回避していくか。その上で、消費者らが正当な製品を選択しやすくするためにはどうすればいいのか。全体を俯瞰しながら、引き続き丁寧な議論を進めていく必要があります。

 最終的な目標は、秋野さんがおっしゃったように患者も含め、人々が豊かな生活を維持できるようにすること。そのための道は決して平坦ではないかもしれません。それでも、皆で議論しながら、少しずつでも前に進めていく。そういうことでしょうね。

──どこまでいっても、事業者の果たすべき役割が大きいということですね。柴田さん、最後に一言お願いします。

柴田 きょうはありがとうございました。きょうの議論で非常に重要だと思ったのは、サプリメントと医薬品の間には法律上の距離があるけれども、患者さんから見ると非常に近い、ということです。それはCBDやカンナビノイドに特有の事情であるのかもしれませんが、ウェルビーイング(Well-being)という大きな枠組みの中では、健康な人、患者さん、どちらにとっても必要なものであるということ。だから私たち事業者は、今回起きてしまったサプリメントの健康被害問題も教訓にしながら、誰にとっても安全な製品を常に提供していく必要がある。それをCBDやカンナビノイドの業界全体として出来るようになれば、国民の大麻に対するイメージを大きく変えられるかもしれません。そのようにして、日本の新しい産業として大麻関連産業を盛り上げていきたいですね。経営者として、ビジネスマンとして、そう考えています。

──ありがとうございました。

(了)

【司会・構成:石川 太郎、対談日:2024年4月3日】

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