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これからのカンナビノイドを語ろう(前) 【CBD座談会】サプリと医薬が共存する世界へ

 大麻草に含まれるカンナビノイドの一種、カンナビジオール(CBD)。大麻関連法規制の改正を受け、今後、医療の領域でも活用されていくことになる。

 原則として健康な人が使用するサプリメント等と、疾患を抱える患者のために用いる医薬品が共存する世界が日本でも生まれる。そうした新しい世界において、健康維持・増進(ヘルスケア)目的のCBD製品を製造・販売する事業者に求められることは何だろうか──。

 それぞれ異なる立場でカンナビノイドに関わる、松原仁代議士(衆院議員、無所属)、秋野公造参院議員(公明党)、柴田耕佑㈱ワンインチ代表取締役(CBD製品輸入販売事業者)の3人が語り合った。前中後編の3回に分けて掲載する。

──きょうはお集まりいただきありがとうございます。自己紹介から始めましょう。まずは松原代議士から。

松原 カンナビジオールの活用を考える議員連盟(CBD議連)の事務局長を立ち上げ時から務めさせてもらっています。

 立ち上げは2021年ですから3年が経ちます。そもそものきっかけは、大麻草から得られるCBDというものがある、米国ではてんかん治療薬として使われている、そのうえEU等ではサプリメントとして活用されていて、さまざま効果が期待できる。そんな話をある大学教授から教えていただき、ならば日本でもそれを活用出来るようにすべきだろうと考えました。

 しかしそうはいっても日本は大麻に対する拒否感が非常に強い。だからCBDを活用していくためには、丁寧な議論を進める必要がある。そのようにしてCBDを社会的に活用できる環境を作っていきたい。そういう目的でこの超党派の議連はスタートしました。当初の会長は自民党の河村建夫元官房長でした。しかしご勇退されるとのことで、山口俊一先生(衆院議員、自民党)に会長になっていただきました。

──次に、秋野議員。医師ご出身で、厚生労働省の医系技官でもあったという経歴をお持ちです。当時お勤めの部局はどこでしたか?

秋野 最後は医薬食品局(現在の医薬局)です。血液対策課に席がありましたが、総務課や監視指導・麻薬対策課にも併任がかかっていました。

松原 すると、佐藤大作さん(大麻取締法等を所管する厚労省監視指導・麻薬対策課長)とも一緒に働いていらっしゃった?

秋野 はい、同僚で仲良しでした。年次は私のほうが少し上ですが。

松原 先輩ということですか。それは重い(笑)

──今回、秋野さんにお声がけさせてもらったのは、医師として医療の方面からCBDやカンナビノイドに関わっているからです。2019年3月の国会で「大麻由来医薬品の治験(臨床試験を行うこと)は可能か」と質疑し、国から「可能」との答弁を引き出しました。この質疑はどういう経緯で?

秋野 「てんかん診療拠点病院」という制度を実現したところまで話は遡ります。当時のてんかん学会の大澤眞木子理事長や、今の日本臨床カンナビノイド学会の太組一朗理事長らの後押しを受け、厚労省に提案して制度を作ってもらいました。てんかん患者さんの中には既存の医薬品では発作を抑制できない方がいます。そうした患者さんに対して手術を選択肢にしたのがこの制度の柱です。その結果、てんかんの外科治療が広がりを見せました。

 ですが、手術でも発作を抑制できない場合がある。そうした中で、18年に米国で薬事承認されたのが、大麻草由来のCBDを主成分とするエピディオレックス(難治性てんかん治療薬)だったのです。既存の治療薬でも手術でも発作を抑制できない患者さんを救えるかも知れない。しかし日本では、大麻取締法の規制があるから、輸入もできないし、医師の施用も、患者が施用を受けることも認められていない。なんとかならないかと考え抜いて、大麻取締法の条文に治験に関する記載がないことに気づいた。そこで「治験は可能か」と質疑したのです。

 今振り返って、法律は大麻由来医薬品の施用を想定していないから、施用につながる治験もダメ、という答弁もあり得たと思います。しかし国は「可能」と答弁してくれました。厚労省が頑張ってくれたのだと思います。その瞬間、治験という手続きを踏めば、大麻由来医薬品を日本の患者さんに届ける道が初めて開けたのです。同じ年の5月にも国会で質疑しました。今度は、「海外で承認を受けていない『大麻由来薬物』も治験は可能か」と質疑しました。国の答弁は「可能」でした。この答弁の意味するところは、薬機法(医薬品・医療機器等法)に基づく「治験」という制度を活用するならば、海外で承認されている「大麻由来医薬品」、承認されていない「大麻由来薬物」を、国内の患者さんのもとへ届けることが出来るということでした。

 この時点で大麻取締法の改正は必至でした。というのも、米国の後に英国でも薬事承認されたエピディオレックスは日本でも承認される蓋然性が高い。実際、国会答弁を受けて、エピディオレックスの治験が始まりました。国内で治験が行われ、治験のもとでは大麻由来医薬品/薬物を患者の元に届けることができたのに、医薬品として承認されたら、たちまち大麻取締法に基づいて医師は施用してはならない、患者は施用を受けてはならないとなってしまうのは法律として整合が取れない。だから「治験可能」という答弁を得られた19年の時点で、大麻取締法改正はほとんど決まっていたようなものということです。

──19年3月というと、厚労省が検討会(大麻等の薬物対策のあり方検討会)を立ち上げる1年近く前ですね。CBDをめぐってそんな攻防があったのですか。

松原 実は、議連の立ち上げ当初、ある方から「会長代行で秋野先生はどうか」と推薦があった。私もそのつもりでいました。しかし当時、秋野さんは選挙を控えていらっしゃった。そのため実現しなかったのですが、秋野先生にはやはり議連のエンジンとして医療の方面からいろいろとアドバイスをお願いしたいと思っています。

──次に、柴田さん。きょうはCBD事業者の代表として参加してもらいました。

柴田 ありがとうございます。2018年に起業しました。CBDに関わるようになったきっかけは、もともとサプリメントを使うのが趣味だったんです。というのも、IBS(過敏性大腸症候群)を抱えていまして、母親は医師なのですが、いろんな薬を試してみたものの治らない。それで2013年頃、当時大学生でしたが、個人輸入で米国からCBDオイルを取り寄せて使ってみました。だからもう10年以上、自分自身でCBDを摂取しています。

 大学を出た後はいくつかの会社で働いたのですが、確か16年か17年頃、米国でCBD企業の上場が始まっていたんです。それを見て、この流れは日本にもいずれやって来るだろうと確信し、渡米して200以上のCBD企業を訪問しました。その中で唯一、日本の規制に則したCBDオイルを作りましょうと言ってくれたのが、当社が現在も独占契約を結んでいるテネシー州の企業です。独占契約の締結をきっかけに、スタートアップとして将来的には上場を目指す、CBDを日本の新しい産業に育てていく、そういう覚悟で起業しました。

──柴田さんはCBD議連のオブザーバーとして毎回の会合に出席していますね。

柴田 CBDなどの大麻関連産業を日本に実現させるためには、政治や行政との連携が必要不可欠だとずっと考えていました。しかしCBDやカンナビノイドの業界はよく分からない事業者が多い。昨年、いわゆる「大麻グミ」の問題が起きたのはご承知のとおりです。だから、まずはわれわれがちゃんとして、政治や行政の皆さまとしっかりお話をさせてもらえるようにしようと。「ちゃんと」と言うのは、例えば、当社で販売するCBD製品の安全性を確認するための臨床試験を行い、論文を発表しています。そうしたことを行っているCBD事業者はまだまだ少ないのが実情です。

 今後の日本の大麻関連産業には3つの柱があると考えています。1つは、いま秋野先生がお話された医薬を含めた医療、次に栽培。神社のしめ縄などに使われる産業用大麻栽培の振興を目指す勉強会を自民党が立ち上げています。そして3つめが、私たちが直接関わっているサプリメントなどの食品。昭和大学の佐藤均教授(薬物動態学)が松原先生にご相談したことをきっかけに議連が立ち上がった後、3つめのポジションのちゃんとした事業者として皆さまにいろいろな提案をさせてもらいつつ、議連の末席に座らせていただている次第です。

松原 議連発足の経緯はまさにそう。CBDにはさまざまな効果が期待できると私に教えてくれたのが佐藤教授です。そこから物事が動き始めました。その後、CBDを日本でも活用していくためには大麻取締法の改正が必要になる、そのためには超党派の議連を起ち上げる必要がある、というアドバイスをある方からいただいた。これが議連立ち上げの契機です。

(中編につづく)

【司会・構成:石川 太郎、対談日:2024年4月3日】

中編はコチラ
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