1. HOME
  2. 健康食品
  3. これからのカンナビノイドを語ろう(中) 【CBD座談会】サプリと医薬が共存する世界へ

これからのカンナビノイドを語ろう(中) 【CBD座談会】サプリと医薬が共存する世界へ

 大麻草に含まれるカンナビノイドの一種、カンナビジオール(CBD)。大麻関連法規制の改正を受け、今後、医療の領域でも活用されていくことになる。
 原則として健康な人が使用するサプリメント等と、疾患を抱える患者のために用いる医薬品が共存する世界が日本でも生まれる。そうした新しい世界の中で、健康維持・増進(ヘルスケア)目的のCBD製品を製造・販売する事業者に求められることは何だろうか──。
 それぞれ異なる立場でカンナビノイドに関わる、松原仁代議士(衆院議員、無所属)、秋野公造参院議員(公明党)、柴田耕佑㈱ワンインチ代表取締役(CBD製品輸入販売事業者)の3人が語り合った。前中後編全3回のうち中編。

──実際に大麻取締法等が改正され、昨年12月に改正法が公布されました。

松原 天の時、地の利があった。柴田さんがご指摘のように、流れが来ているとは感じていました。佐藤教授や柴田さんらの話を聞いて、部位規制というのは時代遅れだし、それを成分規制に改めるというのは極めて科学的だろうとも思った。その上で、THC(テトラヒドロカンナビノール、幻覚成分)の製品中残留限度値を国として規制する流れとなった。その数値は、相当厳しいものになるのではないかと思われます。大麻に対する日本人のネガティブな感情を考えると、緩い数値になるはずがない。秋野さんはどうお考えになりますか?

秋野 THCに対する私の考えは、医療上の必要があるというなら、治験を行って、有効性と安全性を証明するべきだ、ということなんです。医薬品としての承認を目指す過程で、有効性を示す量も、安全性の範囲も見えてきて、サプリメントなど食品として安全に摂取できる量が見えてくる。当然、医薬品として摂取する場合よりも少なくなります。私が行った19年の国会質疑で、大麻由来医薬品/薬物の治験は可能と国が答弁しているのですから、現時点では、大麻由来のいかなる成分の治験も可能です。この点は強調しておきます。

 でも、大変残念ながら、今のところ誰もTHCの治験をやろうとしないのです。治験を行い、医薬品としてTHCの効能・効果と安全性が承認され、サプリなどとして安全に摂取できる量が確認されるならば、製品中のTHC残留限度値の意味合いは変わってくるはずです。

松原 なるほど。

柴田 あとは区分の問題だけですね。医薬品なのか、食品なのかという区分。

秋野 そうです。今回、大麻取締法の何が改正されたかと言えば、大麻由来医薬品を医師が施用してはいけない、患者が施用を受けてはいけない、この部分を改正し、大麻由来医薬品を主に麻向法(麻薬及び向精神薬取締法)の規律に移した。つまり、大麻由来医薬品を麻薬として扱うことで、正々堂々と医療の世界で使えるようにしたわけです。ですから、CBDにせよ、THCにせよ、まずは医薬品として承認され、それを真に必要とする患者に届けられるようにすることが基本です。

 主として健康な人が使うサプリは、その後の展開として欲しいと思います。私はサプリを否定しません。むしろ賛成です。ただし、真に必要な方に届けることを優先して、段階を踏んでほしいのです。

──秋野さんはCBD議連の活動をどのように見ていたのですか?

秋野 改正大麻取締法の立法事実は何かと言えば、大麻由来医薬品や大麻由来薬物を患者さんに届けることです。それらを医師が施用できるようにする、患者が施用を受けられるようにする。それが立法事実。ですから、ざっくばらんに言わせていただくと、議連で、CBDをもっと活用できるようにすると言われても、一律に進めるのはちょっと待ってくださいと思っていました。しかしそれは法律が改正されるまでのこと。法改正が成し遂げられ、大麻由来医薬品や大麻由来薬物を必要とする患者に届けることが出来るようになった今は違います。

松原 今、秋野さんは医療の方面からCBDやTHCの有用性をお話されました。私は医療の専門家ではありませんが、医療だけでなくサプリという分野も、人々の生活を豊かに出来る要素があるという期待感を持っています。実際、CBDを摂取している人の中には、効果があったという話をよく聞きます。しかもその効果はどうやら多岐にわたるようです。今のところ因果関係ははっきりしないのだとしても。

柴田 秋野先生のおっしゃるとおりで、治験すべきなんです。CBDについてはすでに行われていますが、THCはまだ。THCの効果に期待している人は多いのですから、まずは医療の方面で治験を進め、どれだけ摂取すると危険なのかを確定させるべきです。しかし私は、サプリメントなど食品としてのTHCを議論するにはまだまだ時期尚早だと考えています。まずは一定の安全性が確認されているCBDを前に進めていくべきで、その中でCBD議連の役割がもっと大きくなっていくと思います。

秋野 私も、そう思います。

柴田 法改正によって、先ほど申し上げた3本の柱を推進する大義名分が出来ました。ただ、法改正されたといっても、解決すべき課題がまだまだ多く残されています。サプリメントなど食品に関して言えば、食薬区分をどうするのか、製品の安全性や品質をどのように担保していくのか、機能性表示食品などの保健機能食品としてやっていけるのか、などといった課題があります。

 それに、機能性表示食品のサプリメントで健康被害が起こりました。ですから今後、食品としてのCBDについて同様の問題を起さないようにするためにはどうすべきであるのか、という議論も必要になってくるでしょう。この健康被害問題は、食経験が短い「新規食品」の安全性に関わる問題でもあると思うのですが、CBDも新規食品です。そうした新しい食品の安全性をどう証明し、どう担保していくのかということを、議連、行政、業界団体が連携して話し合っていく必要があると私は考えています。

 その上で事業者は、極めて当たり前のことではあるのですが、薬機法や景品表示法などの法令を遵守していくこと、安全性や品質を確保するための決まり事を守っていくことが大切になる。当たり前のことを、当たり前のようにやっていきましょう、ということです。

松原 今のお話は非常に重要ですね。先日の議連の会合で、CBD業界4団体が合意の上で取りまとめた共同声明を山口俊一会長が受け取りました。共同声明の内容を一言でいえば、われわれは法律に則って事業を行います、です。これは極めて大切なことで、その約束は必ず実行してもらう必要がある。CBD業界団体は他にもあるということだから、出来るだけ多くの団体がこの共同声明に賛同し、実行していただきたい。当たり前のことを当たり前にやらない業者がばっこするということになると、行政も摘発に次ぐ摘発を連綿と進めることになる。そうしたイタチごっごはわれわれ議連の目指すところでは全くありません。

──個社の問題が業界全体に影響を及ぼすということもあります。業界としての自浄作用も求められそうです。秋野さん、医師として、ヘルスケア用途のCBD製品を販売する事業者に何を求めますか?

秋野 てんかんを伴う指定難病だけでも、120以上を数えます。エピディオレックスの治験が始まったというお話を先ほどしましたが、治験は、そのうち3つの疾患に対してしか行われていないのです。このままでは、その他の疾患を抱える患者さんに届けられない。だから私は、THCが効くというなら、THCも含めて治験をどんどん進めて欲しいと訴えているのですし、患者さんの生活の質を維持するためには、CBDオイルなどサプリの役割が非常に重要になると考えているのです。だから私はサプリを否定しません。薬機法上、効果があるとは言えなくとも、患者の生活の質を維持するためにサプリを必要とする領域がある、という立場です。

 その上で、お尋ねにお答えすると、先ほど柴田さんがCBDやカンナビノイドの業界にはよく分からない事業者が多いとおっしゃった。そうした事業者が問題を起こすと、患者さんの生活に影響が及ぶのだということを知っていただきたい。THCV(テトラヒドロカンナビバリン)というTHCの類縁物質があります。合成ではなく、大麻草に含まれる物質です。最近、合成カンナビノイドを配合したグミを「大麻グミ」と報道しましたが、合成カンナビノイドは大麻由来ではないから「大麻グミ」と名付けた報道は明らかな誤りです。過去に、そういった問題を受けて、THCVが薬機法上の指定薬物に包括指定されてしまったのです。そのTHCVなしには、発作を抑制できないてんかん患者さんたちがいたのです。子どもたちでした。包括指定される以前から、サプリのCBDオイルに含まれるTHCVも含めて摂取して、なんとか生活の質を維持していました。

柴田 大麻草に含まれるカンナビノイドは100種類以上あります。THCVはそのうちの1つです。カンナビノイドをブロード(広範囲)に抽出してTHCを除去したCBDオイルの中には、THCVを含むものもあります。CBDアイソレートと呼ばれるタイプの製品には原則、含まれません。

秋野 「カンナビノイド医療患者会」(PCAT)という患者さんの団体があります。難治性てんかんなどに対してCBD等のカンナビノイド製品を使用する患者家族が中心となり作ったグループです。そこに所属する難治性のてんかん、なかでも大田原症候群を抱える子どもたちが、市販されているブロードに抽出したCBDオイルを摂取して、てんかんの発作を抑制するなど生活の質を維持していました。エピディオレックスは、その疾患を治験の対象としておらず、食品として摂取し続けるしかなかったのです。しかし、そのオイルにTHCVが含まれていて、THCVが指定薬物として包括指定されてしまい、所持さえ許されないものになってしまった。これは患者さんの命に関わる問題です。ですから、すぐに患者の皆さんと一緒に厚労省へ行き、濵地厚労副大臣に窮状を訴え、患者が生活の質を保つための正規の用途として使用を認めてもらいました。

 健康な人を対象としたサプリメントなどの食品としてCBDなどのカンナビノイドを扱っている事業者が問題を起こすと、真にCBDを必要とする方が困ることになるということを知って欲しい。THCVが指定薬物にされてしまったのは、健康な人ばかりを見て、患者さんを見ないからです。CBDなどのカンナビノイドを真に必要とする患者がいるのだということへの思いを常に致していただきたいと思います。

(後編につづく)

【司会・構成:石川 太郎、対談日:2024年4月3日】

前編はコチラ
後編(最終回)はコチラ
関連記事:大麻由来製品THC残留限度値 厚労省が案を示す
    :CBD業界4団体が共同声明 品質から表示まで法令遵守を宣言
    :CBD議連の活動、事務局長の松原仁議員に聞く

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ