我が国初の内臓脂肪減少薬が話題を集めている。きょう発売された全国紙の朝刊を飾った広告には、「お腹が太めな方に朗報です。脂肪に、希望」というブルーのキャッチが躍っている。発売元は大正製薬㈱（東京都豊島区、上原茂社長）で、商品名は『アライ（alli）』。ネーミングの由来は、減量に努める人と連携する、アライアンスするという意味にあるらしい。
　カプセルも淡いブルーだ。同社によれば、「青や水色の寒色系の色は食欲を抑える色と考えられている」としている。有効成分は「オルリスタット」。リパーゼの吸収阻害により脂質を腸で分解することなく便と共にそのまま排出する。

　2009年に大正製薬はグラクソ・スミス・クラインからアライの日本における開発・販売権を取得。国内における安全性・有効性試験を経て来月8日の発売に漕ぎつけた。
　
　我が国初の医薬品ということで消費者の関心も高い。4日放送の「Nスタ」では、価格や注意点について、かなりの尺で同品を紹介していた（＝写真）。糖尿病専門医が複数出演し、同医薬品の作用機序や副作用について解説した。ある専門医は、「こうした薬は美容目的の痩せる薬ではない。対象外の人が使用すると免疫が低下する可能性もある」と指摘。2月22日に販売が開始された肥満症治療薬『ウゴービ』との比較も行った。

　内臓脂肪減少機能に関しては、「ラクトフェリン」や「葛の花イソフラボン」、「酢酸」、「茶カテキン」、「ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン」などの関与成分を配合した機能性表示食品が数多く販売されている。もちろん、あくまでこれらはゆるやかな作用を期待させる食品である。薬のような効果があるわけではないが、消費者は効果に期待してこれらの製品を摂取する。

　これに対して『アライ』は、薬剤師から対面での指導や情報提供を受ける必要がある要指導医薬品。18歳以上、腹囲「男性85cm、女性90cm」以上、生活改善の取り組みを行っている人――などと利用する人の条件が定められている。

　また臨床試験の結果、「おならをすると便が漏れる」、「気付かない間に肛門から油が漏れる」などの副作用が報告されており、おむつや生理用ナプキン、便漏れパットなどで対策することが推奨されている。大正製薬の公式サイトでは「発症率は次第に落ち着く」としているが、果たして同品は前評判ほどヒットするのだろうか。同社に反響を聞いてみたところ、「問い合わせは来ている」とのことだ。4月以降の動きに注目したい。

【田代　宏】

（文中の写真：5日発売の朝刊に掲載された「アライ」の全面広告）