【YouTube】「塗るだけで痩せる」根拠なし~消費者庁
消費者庁は22日、自社のウェブサイトで2017年8月頃からマッサージクリームを販売していたビジョンズ㈱(東京都品川区、岩野竜志社長)に対して景品表示法に基づく措置命令を下した。
措置の対象となったのは『プルマモア マッサージ&モイストボディクリーム』という商品。少なくとも2020年7月29日~12月22日までの期間、「女の格を上げるのは 塗るだけダイエット?! ダイエットにも美容にもこれ一本! 痩身効果 ホスファチジコリン ※脂肪溶解注射のメイン成分」、「プルモア塗るだけダイエットで約-8㎏達成」、「脂肪を溶かすホスファチジコリン」、「史上最強キレイために 瘦せクリーム誕生」などと表示し、塗るだけで著しい痩身効果があると標榜していた。
有名なブロガーを広告塔に起用したり、瘦身成分「ホスファチジルコリン」と思われる成分名を記載するなどして痩身効果を強調していた。販売対象は20代~40代の女性をターゲットにしていたが、実際にはかなり若い女性が購入していたとされる。
消費者庁が裏付けとなる資料の提出を求めたところ、配合を示す成分分析表や体験談は提出されたものの科学的根拠を示す実験データなどは提出されなかったため、成分含有の有り無しにかかわらず、根拠不十分と判断したという。
また、ウェブサイトで表示されていた「掲載しているお声は、個人の感想であり、実感には個人差がございます」、「適度な運動とバランスの良い食事にプルマモアを併用いただいた結果です」、「個人の感想であり、効果・効能を保証するものではありません」、「普通のマッサージでは硬まった脂肪を柔らかくするのは難しい※マッサージ効果による」(原文ママ)などの打消し表示について、この程度の打消し表示は一般消費者の目に留まりにくくアリバイにならないとし、景品表示法7条2項の不実証広告規制に基づき、5条1項の優良誤認に当たるとして措置命令を行った。
同社は今後、これらの表示が優良誤認表示だったことを広告やウェブサイトにおける告知などを通じて一般消費者に周知し、再発防止策を講じて役員や従業員を教育しなければならない。もちろん類似の商品における不当表示を行ってはならない。
同社は住宅設備事業やEコマース事業を主に展開。今回不祥事を行ったのは雑貨の企画・販売を行う事業部門で、対象となった商品はOEM生産品。
消費者庁によれば同社は今後、再発防止に向けて真摯に対応する姿勢を示しているという。
松風宏幸調査官は、調査の過程で専門家の話として「塗るだけとか貼るだけとか、何かをするだけで痩せることは難しい」とし、食事制限や運動と合わせて行う必要があると説明した。新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要があるなか、これからも同様の事案について注視していくと話している。
【解説】
以下に、記者会見に出席した記者の質問と松風調査官の回答をQ&Aとして簡単にまとめる。詳しくはYouTube動画を視聴していただきたい。
ビジョンズ側は、今回の違法表示について「ウェブ会社に任せてしまった」と消費者庁に対して言い訳をしているようだが、第1回アフィリエイト広告検討会でも消費者庁から話が出たように、「表示内容に対する最終的な責任は広告主が負う」というのが原則。一義的な責任に対して事業者は強い自覚を持つ必要があるだろう。人気商品だっただけに販売規模によっては課徴金も考えられるが、消費者保護の観点からは消費者への速やかな返金を先に行うことが重要。
また、ウェブサイトでは「初回お試し10日コース 980円」などの表示も。景表法だけではなく、特商法の適用に向けた調査も行う必要はないか。
さらに、ウェブサイトでごく小さな文字で記載のある「打消し表示」については、消費者庁は2017年7月に「打消し表示に関する実態調査報告書」をまとめており、たとえ打消し表示を行っても消費者が表示を認識・理解できない場合にはエクスキューズにならないとはっきりと述べている。このような打消し表示がアリバイになるという安易な考えは捨てた方が良い。
<Q&A>
Q:ボディクリームに痩身効果のある成分が入っていたのか?
A:成分が入っているかどうかは今回は調べていないが、「ホスファチジルコリン」という成分が脂肪を溶かすという触れ込みで実際に使われていることは確か。ただし、実際に痩せるのかどうかは未確認で定説かどうかはともかくとして、専門家の話では「皮下注射をして仮に脂肪が柔らかくなっても脂肪が燃焼しなければならない。溶けただけでは外に排出されるわけではないため、カロリーとして消費しないと瘦せることにはつながらないのではないか」と聞いている。
Q:クリームを使った実験はしていなかったのか?
A:行っていない。一般的な話になるが、クリームを塗って経皮に吸収されることはあるが、深部にまで吸収されるかどうかは疑わしい。
Q:定期購入をめぐるトラブルはあったのか?
A:表示担当のため詳しくは分からないが、そういう話は耳にはしている。
Q:この商品は今も売られているのか?
A:表示は消されていると思うが、販売は継続されていると聞いている。
Q:苦情はあったのか?
A:PIO-NETでは2020年1月1日~21年5月31日までの1年半で6件あった。
Q:打消し表示はどのような使われ方をされているか。
A:動画参照(17分28秒~)
【田代 宏】
YouTubeチャンネル「根拠なし 塗るだけで痩せるクリーム」