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【続】機能性表示食品「届出表示」のなぜ?(後)

<「γ-オリザノール」、「桑由来モラノリン」は生鮮食品か?>
それでは、「γ-オリザノール」、「桑由来モラノリン」は「生鮮食品に元から含有される成分」なのか?
厚労省が2015年5月に公表した「農産物等の食品分類表」によれば、玄米や桑の葉は生鮮食品に分類されている。さらに、届出情報を見てみよう。

SBIアラプロモの『発芽玄米の底力』は、「γ-オリザノール」と「GABA」を機能性関与成分としている。届出資料の「安全性に関する届出者の評価」によると、「当該製品は発芽玄米の包装米飯であり、原料となる米は主食として日本人に長く食され、十分な食経験と安全性を有する。当該製品はGABA(γ-アミノ酪酸)やγ-オリザノールを添加した製品ではない。(略)当該製品に含まれるγ-オリザノールは米糠部に含まれているものである。玄米の市場規模は466億円、12万トン程度((一社)高機能玄米協会、玄米食白書2019)、発芽玄米の市場規模は150億円超、1.5万トン程度(農研機構、北陸・水田畑作物部会、2008年)と、日常的に流通されている食材であり、玄米や発芽玄米に起因すると考えられる重篤な健康被害は報告されていない」としている。

「桑由来モラノリン」についてはどうか。
『OSK(オーエスケー)粉末桑茶』の届出を行った小谷穀粉は、「原料である桑の葉は、天ぷらや煎り茶、粥に、果実は生食、ジャム、リキュールに利用するなど葉、果実共に食経験があり、かつ重篤な有害事例は報告されていない。別名の『1-デオキシノジリマイシン』は、『専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト』に収載されているが、医薬品や医薬部外品として発売された実績はなく、当該成分を含有している桑葉は、同リストにおいて『非医』と定められている。届出食品は生鮮である桑葉を乾燥し、茶としての利用を目的に切断、粉砕などの簡易な加工を施した食品であり、製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしていない。また、食経験に基づいて安全性が確認されていることから、『医薬品の範囲に関する Q&A』に従い、届出食品は医薬品に該当しないと判断した」と記載している。さらに、モラノリンが同程度含まれる類似食品として、桑茶による喫食実績を評価。「類似食品の喫食実績による食経験で、届出食品の安全性は評価できる」としている。

<イミノシュガーはDNJの総称>
一方、消費者庁に届け出られたイミノシュガーの研究レビューには、「桑の葉には、糖類分解酵素であるα-グルコシダーゼを阻害する作用を持つ1-デオキシノジリマイシン等のイミノシュガーが豊富に含まれることが知られており、ヒトでの食後血糖値上昇抑制作用や耐糖能改善作用等が報告されている」、「桑の葉由来イミノシュガーは、1-デオキシノジリマイシン、2-0-α-D-ガラクトプラノシル-1-デオキシノジリマイシン、ファゴミンの3成分が主要成分として同定されており、この3成分がイミノシュガーの大半を占め、α-グルコシダーゼを阻害作用及び食後血糖値上昇抑制作用に寄与していることが確認されている」などと、イミノシュガーが医薬品成分DNJを含有することが明示されている。

実際、小谷穀粉はイミノシュガーを機能性関与成分とした届出も一度検討したらしい。その方が届出自体はスムーズだったと思われるが、論文を読むうちにDNJという名称が出てくる。イミノシュガーはDNJを含む総称ということなので、医薬品リストにも収載されている関係から使用できないだろうとし、試行錯誤を重ねたという。
いずれにせよ、以上のことから、「γ-オリザノール」、「桑由来モラノリン」に関して、医薬品との混同を回避するため、事業者は工夫を凝らして慎重に慎重を重ねて届出を行った形跡が伺われる。

<有識者の見解は?>
今回の場合、イミノシュガーで表示しようとする機能性において、機能性関与成分が記載されているということであれば、公正性の観点に立てば、「桑由来モラノリン」、「γ-オリザノール」についても記載して構わないということになる。
この点について東京大学名誉教授で(公財)食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏は、「『生鮮食品に元から含有される成分』であれば、医薬品であるという誤解を生まないように注意した上で、記載してかまわないということになる」との見解を示している。つまり、「γ-オリザノール」や「桑由来モラノリン」も、表示しようとする機能性欄に機能性関与成分名を記載しても、それはそれで公表される可能性があったということではないか。

さらに唐木氏は、これは科学の問題ではなく技術の問題とした上で、「①食品表示法に準拠すれば食品中の特定成分を含む製品の効能を表示できる。②医薬品承認を受けずに医薬品成分を使った製品の効能を表示すれば薬機法違反になる。③食品中の特定成分が医薬品成分であるとき、①の表示を行えば②の違反になるのかどうか、答えはどうしたらいいのかまだ決まっていないというところではないか」と指摘した。
また、「“医薬品成分を含む”などと表示すれば違反になるが、食品成分として表示したときについてはどうすべきかまだ決まっていない。消費者が、医薬品と誤認しないことが大事で、この観点から規制を行うが、これはかなり感覚的なところがある」として、消費者庁としては、「規制は必要だが、機能性表示食品にあまりきつい縛りをかけることは避けたい。具体的な着地点は、届出の実例を見ながら詰めていきたいということではないか」との見解を語っている。

読者の皆さんの考えはどうだろうか?

(了)

【藤田 勇一】

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