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【特集】「薬機法」改正までの背景(前)

 医薬品の研究不正に端を発した課徴金制度の導入だったが、健康食品(未承認医薬品)も課徴金制度の対象となった。健康食品が歩んできた20年余りを振り返り、信頼される健康食品とは何かを探る。

島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授 大野 智 氏

発端は医薬品データ改ざん
 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)の一部が改正されたことに伴い、施行日である2021(令和3)年8月1日から課徴金制度が導入された。具体的には、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する虚偽・誇大な広告を行った場合、原則、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額の4.5%が課徴金として賦課される。
 背景として、高血圧症治療薬ディオバンの効果に係る臨床研究においてデータ改ざんが行われ、これを基にした学術論文や販売促進用資材が問題となり、さらに薬機法第66条の誇大広告にも当たるとして行政処分がなされたことがある。さらに健康食品等に関連して、医薬品的効能効果を標榜して広告及び販売を行い、警察に検挙されるケースが跡を絶たない点も、今回の改正にあたって指摘されている。

 今回の薬機法改正で注目された課徴金制度は、導入当初は違法に得た利益を行政的に剥奪することを意図したものであったが、現在は違反行為の摘発に伴う不利益を増大させ、経済的誘引を減少させ、違反行為の予防効果を強化することを目的とする行政上の措置と位置づけられている。これまでに我が国では、独占禁止法(昭和52年導入)、金融商品取引法(平成17年導入)、公認会計士法(平成20年導入)、景品表示法(平成28年導入)の4法においてのみ課徴金制度が導入されており、薬機法は5つ目となる。
 ここまでの話は、読者の皆さんにとっては既にご存知のことだと思う。法改正に関する詳細な内容については別稿を参照いただき、本稿では医師・大学教員という立場で健康食品業界と接点を持ってきた筆者の経験を踏まえ、今後あるべき又は望まれる企業姿勢について私見を述べたい。

健康食品のバイブル本規制
 筆者が健康食品をはじめとした補完代替療法の研究に従事することとなった2000年頃、書店では「がんが消える健康食品○○」といったタイトルの書籍が店頭で平積みされていた。全国紙、地方紙を問わず新聞の広告欄にも、そのような書籍が連日のように宣伝されていた。当時は「表現の自由」を笠に着てやりたい放題という印象を受けた記憶がある。さらに某大手新聞社の記者に疑問に思わないのかと問うても、「担当部署が違うので・・・」と言葉を濁された。しかし、03(平成15)年5月29日に健康増進法が一部改正され、書籍の形態をとっていても、紹介している食品の販売業者の連絡先やホームページのリンクを一般消費者が容易に認知できる状態になっているものについては、広告その他の表示として取り締まりの対象となった。そして、04年5月に、厚生労働省は健康増進法に抵触していたとして、いわゆる「バイブル本」と呼ばれる書籍を広告と判断し、出版社1社(史輝出版)、健康食品業者5社に指導を行った。04(平成16)年7月には「書籍の体裁をとりながら、実質的に健康食品を販売促進するための誇大広告として機能することが予定されている出版物(いわゆるバイブル本)の健康増進法上の取扱いについて」という厚生労働省医薬食品局食品安全部長による通達が出されたことで、バイブル本は処罰の対象であることが周知された。その後、05(平成17)年には史輝出版および関連会社と見られるライブ出版・青山書籍及び健康食品業者は、薬事法(当時)違反の容疑で書類送検されるにまで至った。

(つづく)

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