30キロ増量　「このままでは死ぬ…」

　バブル期前夜の昭和某年。のほほん・ボヨヨ～ンと呑気に学生生活を謳歌していた小生が、堅実な会社と言われて久しい大手食品メーカー中州食品工業へ運良く新卒採用として潜り込む事が出来た（汗）

　配属は会社的には期待の新規事業部門であったが、実は誰も行きたがらない健康食品事業部･･･汗

　それから10年、煩悩にまみれた？健康食品業界の面々と昼に夜に丁々発止渡り合ってきた結果、立派な成人病予備軍としてウエスト周りは肥大化していった･･･トホホ

　この10年で培われた変幻自在な？営業手法を面白がられ、定期異動要員に組込まれた。そして大阪支社の家庭用食品チームである広域流通部へ異動が決まった。気が付けば30代半ばを過ぎ、入社時からなななんと30キロ強も増量していたのだった･･･涙

　健康診断では生活指導の常連となり、指導員の先生から「このままでは死ぬ、とまでは言わないけれど、今すぐに何とかしないと10年後には間違いなく重度の成人病患者だよ」と脅されまくっていた。

ここは大阪、泣く子も黙る黒丸社長との邂逅

　さて、大阪支社へと転勤が決まると「今度転入してくる山笠は強靱な胃袋を持ち合わせている上に酒の武勇伝のスゴイらしい、お手並み拝見や」と、関西の強者どもが小生を手ぐすね引いて待っていた･･･

　当然の如く転勤初日から連日連夜であった･･･。

　そんな「飲めや歌えやの」日々が1年ほど経った頃、原因不明の体調不良に陥り一週間ほど寝込んだ。

　さすがに不安になった小生は、健康管理の為ダイエット目的でスポーツクラブに通おうと思い立ち、中州食品工業の「浪速の春団治」ことコテコテ大阪営業マンのやっさんに軽いノリで相談した。

　面倒見の良いコテコテ関西人のやっさんは「よっしゃ」と取引先で飲み仲間でもあった地域密着コテコテ食品問屋「黒丸商店」の営業課長ナベちゃんに速攻で相談してくれた。

　するとナベちゃん「ほなうちの社長が通ってるスポーツクラブ聞いてみよか」となった。

　期待せず待っていたのだが、そこからの急展開はいかにも大阪商人だ。数日後の昼休みになろうかという頃、ナベちゃんからやっさんに電話があった。

　「うちの社長がこれから難波のスポーツクラブに行くさかい山笠さんもおいで～って言うてるで～」

　業界では泣く子も黙る黒丸商店の黒丸社長だ、さすがに小生も恐縮し、お礼とともに、仕事が休みの週末に一人で行かせて頂きます的な返答をしたところ、やっさんからは「山笠さんアカンて、あの黒丸社長せっかちやさかい、アホ、ワシは重要取引先の社長やぞ言うて四の五の言わずにすぐ来んかい言うてまんねん。ナベちゃんの顔立てて今すぐ行ってくれまっかぁ。午後からの仕事の方はワシが何とかしますさかい･･･」

　小生はわらにもすがる思いで「で、ナベちゃんも付き合ってくれるよね･･･」

　ナベちゃんは即答で「勘弁してえな、頼みますから巻き込まんといてくれますぅ」

　こうして延べ25年にも及ぶ小生のスポーツクラブ通いは慌ただしく始まったのだった。

（つづく）

＜プロフィール＞山笠太郎（やまがさ　たろう）
三無主義全盛の中、怠惰な学生生活を5年間過ごした後、運良く大手食品メーカーに潜り込む。健康食品事業部に配属され、バブル期を挟み10年。その間に健康食品業界で培った山笠ワールドと言われる独自の世界観を確立。その後、社内ではさまざまな部門を渡り歩き47都道府県全ての地に足を踏み入れることとなる。

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