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【新刊紹介】平賀緑著 『食べものから学ぶ世界史』(岩波ジュニア新書)

 「命か経済か、なぜどちらかを選ばなくてはいけないのでしょう」この本で著者はまずこう読者に問いかけている。
 「私たちは、人と社会と地球を壊しながら食料増産して経済成長することが生きるために必要と思っている。それって矛盾していませんか?」

 資本主義経済の歴史をたどりながら、人間と食べものの関わりを分かりやすくひも解いた啓発書。
 ジュニア新書だが、大人が読んでも学ぶところの多い書である。近代的食料システムの形成とともに、人間と食がどのような関係性を持っていたのか、その変遷が手に取るように理解できる。
 
 小麦・大豆・植物油のルーツ、これらアメリカからの輸入品のおかげで肥大化した大手食品メーカーの成り立ちなどが実名を挙げて語られている。インスタントラーメンはなぜ流行したのか? メディアによって語られていたこれまでの定説とは違った視点から眺めた景色が見えてくる。
 しかし同書は暴露本ではない。食のあり方を今一度見直す視点を個人個人が持つことは、SDGsを声高に叫ぶ社会よりも、より身近にSDGsを引き寄せることのできる生き方なのかもしれないと考えさせられる。
 著者は最後にアフリカのことわざを引用している。
 
  もし、
  たくさんの小さな人たちが、
  あちらこちらの小さな場所で、
  それぞれの小さな取り組みを始めれば、
  きっと世界を変えることができるだろう
  (出展:「開発のための農業科学技術の国際的評価(IAASTD)」2008年。著者意訳)

 マザー・テレサもこう言っている。「私たち一人ひとりが、自分の玄関の前を掃除するだけで、世界はきれいになるでしょう」と。

【目 次】
はじめに
序章 食べものから資本主義を学ぶとは
1章 農耕の始まりから近代世界システムの形成まで
2章 山積み小麦と失業者たち
   (世界恐慌から米国中心世界の成立まで)
3章 食べ過ぎの「デブ帝国」へ
   (戦後~1970年代までの「資本主義の黄金時代」)
4章 世界の半分が飢えるのはなぜ?
   (植民地支配~1970年代「南」の途上国では)
5章 日本における食と資本主義の歴史
   (19世紀の開国~1970年代)
6章 中国のブタとグローバリゼーション(1970年代~現在)
おわりに 気候危機とパンデミックの時代に経済の仕組みを考え直す

【体 裁】
発行:岩波書店
判型・新書版
頁数:181頁 
価格:820円(税別)

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