「第7回クリルオイル研究会」、オメガ3系脂肪酸の最新知見を発表
クリルオイル研究会(矢澤一良会長)は10日、「第7回クリルオイル研究会・講演会」をオンラインで開催した。コロナ禍で、今回が2019年7月以来2年ぶりの開催となった。
クリルオイルは、エビに似たプランクトンの一種オキアミから抽出される油。オメガ3系脂肪酸、リン脂質、アスタキサンチンのほか、リン脂質結合型のEPA・DHAを豊富に含むことで魚油よりも人体への吸収率が高く、19年にはクリルオイルを含有した機能性表示食品も公表されている。
慶應義塾大学薬学部、薬学研究科の有田誠教授は、「オメガ3脂肪酸が機能性を発揮する分子メカニズムの解明」をテーマに基調講演を行った。オメガ3系脂肪酸の健康に資する多角的な研究成果が発表された。有田教授は、日本人の食生活が変化し、DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸から、リノール酸・アラキドン酸などのオメガ6系へと、摂取する脂肪酸の質が変わったことが、糖尿病や動脈硬化症など生活習慣病を発症する一因となっていることを指摘。近年の研究や介入試験データを示しながら「オメガ3系脂肪酸は代謝や抗炎症作用、感染症の制御にもメディエーターとして深く関与している」と解説した。
さらに、「クリルオイルは体内への吸収だけでなく、どのように代謝され各臓器に分布されているのかがわかれば、機能性表示食品の開発にも役立てる」と、今後の研究と開発への期待感も示した。
メディア出演の機会も増えている美容皮膚科「アオハルクリニック」小柳衣吏子院長は、「UV紫外線対策だけでは足りない美容皮膚のための可視光線、近赤外線対策」をテーマに講演。可視光線の皮膚への照射が活性酸素を発生させ、色素沈着を起こすことや、近赤外線はコラーゲン分解酵素の発現やコラーゲン繊維の分解など皮膚を傷つけるリスクがあることを挙げ、「注意すべきは紫外線だけではない」と話した。さらに今は塗薬だけでなく、シダ植物抽出成分の飲む日焼け止め薬も発売されていることも報告。美容皮膚科の医師として「オメガ3系脂肪酸を含むサプリメントは、血流促進による美肌や活性酸素の発生制御などの観点からも積極的に勧めている」と話した。同氏は、「アンチエイジング」に代わる概念「ウェルエイジング」を提唱・実践している。
そのほか、血管機能維持に対する魚油の影響に関する学術発表や、クリルオイルに関する海外研究の実例なども発表された。
【堂上 昌幸】
(冒頭の写真:基調講演を行った有田誠氏)