「成分本質(原材料)リスト」はおかしなリスト(唐木理事長)
㈱ウェルネスニュースグループ(東京都港区)は28日、取材報告会「機能性表示食品届出の状況と行政の動き」をオンラインで開催した。同社の藤田勇一記者が、2020年に公表された機能性表示食品の届出状況を中心に報告した。
27日、「桑由来モラノリン」を機能性関与成分とした、㈱小谷穀粉(高知市高須)の粉末桑茶『OSK(オーエスケー)粉末桑茶』が公表された。
「本品は、糖の吸収を抑え、食後血糖値の上昇を緩やかにする機能があることが報告されている桑由来の成分が含まれています」と表示する。
桑葉モラノリンは「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」の別名で、同成分は「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている成分。ただし、クワの「葉・花・実(集合果)」は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収載されている。
事業者は、「届出食品は生鮮である桑葉を乾燥し、茶としての利用を目的に切断、粉砕 などの簡易な加工を施した食品であり、製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしていない。また、食経験に基づいて安全性が確認されている事から、“医薬品の範囲に関する Q&A”に従い、届出食品は医薬品に該当しないと判断した」としている。
消費者庁の担当官は取材に対して、「ガイドラインから逸脱していないため受理した。届出に際して成分名を指定する必要があるため、“1-デオキシノジリマイシン(DNJ)”の別名“モラノリン”となっているが、葉の部分が使われているということで、医薬品成分には該当しないと判断した」と説明。
昨年12月10日に公表された、「GABA」と「γ-オリザノール」を機能性関与成分としたSBIアラプロモ㈱の『発芽玄米の底力』の件など同様のケースでは都度、厚労省との調整を行っていると述べた。
これに関連して参加者からは、㈱ファンケルの「桑の葉イミノシュガー」、「キトサン」、「茶花サポニン」を機能性関与成分としたサプリメント『カロリミットa』について、「“イミノシュガー”は“1-DNJ”の別名であるにも関わらず、なぜ問題にならないのか」などの質問があった。
東大名誉教授で(公財)食の安全・安心財団の唐木英明理事長が、昨年公表された「免疫表示の問題点」、「ガイドライン違反のSRによる届出の表現」、「食品表示法と薬機法の境界」などについて解説した。システマティック・レビュー(SR)に基づく届出で、「報告されています」ではなく「機能があります」とした届出が公表され、後日撤回した後、昨年末に再届出が行われている件に対して、「企業と消費者庁双方の不注意としか考えられない。あってはならないこと」と釘を刺した。
「食品表示法と薬機法の境界」について、「現状では医薬品成分本質(原材料)リストと非医薬品成分本質(原材料)リストに従うしかないが、分類の根拠は科学だけではない。また、使用実態は変化する。要するに『おかしな』リスト」と指摘。「リストが現状に合わないのであれば、業界として非薬品リストの拡大・見直しを訴えるべきで、根本的な解決として、『機能性食品法(仮称)』の制定により、非医薬品に法律的根拠を与えること」と解説した。
参加者からはほかにも、「CBDが医薬品リストに掲載されていないのはなぜなのか?」、「“γ-オリザノール”の同製品における含有量と、一般的に医薬品として処方される用量にはどの程度の差があるのか?」、「『機能性食品法(仮称)』制定は賛成、まずは、食品衛生法における指定成分の中にこれらを組み込んだらどうか?」、「消費者庁が受理という言葉を使ったのか?」などの質問が寄せられた。