「慰謝料」をめぐり意見が対立~第7回消費者裁判手続法検討会
消費者庁は14日、第7回「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」(消費者裁判手続法検討会)をオンラインで開催した。
今回はこれまでの議論を踏まえ、消費者裁判手続法の対象となる事案の範囲「請求・損害の範囲」、「請求・損害の範囲および被告の範囲」、「被告の範囲」について、基本的な方向性について議論した。
消費者契約で一律の慰謝料が認められた例として「茶のしずく石鹸」における集団訴訟も事例として取り上げられた。
現在の消費者裁判手続特例法(以下、特例法)で「慰謝料」が除外されていることに対し、沖野眞巳委員は「(消費者被害で)財産的な損害の困難さを慰謝料で対応している場合、少額での一律の慰謝料が認められる例もある」とし、「消費者被害に対して救済を確保するという点からは、その利用が入り口で一律に排除されていることは望ましくないので見直すべき」とする意見があった。河野康子委員は、被害救済の道が広がるとして賛同した。
大高友一委員は、同検討会は「団体のニーズを踏まえて、対応の必要なところを急いで取りまとめて、一刻も早い改善を実現するというのがタスク。そういう観点から、まず慰謝料というものを念頭に置いて検討を進めていくということ自体には異論はない」と肯定しつつ、拡大損害など定型的に認定が可能な損害というのは、一律に特定の対象から排除する必要はないとした。
他方、木村健太郎委員は、慰謝料というものが精神的損害だけではなくさまざまな損害の受け皿になっていることを引き合いに、「精神的損害と言えないようなものも含めて、法文上は多分、精神的な損害ということで一定の要件を満たせば請求を可能にする。予測可能性という観点から言うと、結局、精神的損害ではないものもそこに含めて、いろいろ請求できるということを意味しているかと思うので、事業者からすると予測可能性が現行法に比べると著しく低下するということは否めない」と反対の立場を示した。
結論として、「画一的に算定できる」ような被害については特例法で認めてもよいのではないかとの意見が大半だったが、慰謝料の問題や個人情報漏洩に関する問題をめぐり、その範囲をどこまで絞るかという点で、今後に検討の余地を残した。
被告に個人を加えるかどうかという点については、「手続きの訴えの提起時において、事業者に十分な財産がないか、または事業者に対する強制執行に著しい困難が生じる恐れがあると見込まれる」ケースについては反対意見が多数を占めた。
「事業者が故意または重過失による不法行為責任を負うべき場合」、「当該事業者と故意、または重過失による共同不法行為責任を負う個人」については、意見は分かれた。
また、「共通義務確認訴訟における和解に関する規律のあり方」として、和解の手順、手続きについて可能性を探った。今後の方向性として、大筋、柔軟性を容認する方向でまとまったが、「団体が事業者に消費者への支払や寄付をさせること、違約金等を受け取ることを財産上の利益の受領の禁止等の対象外とする」において、団体への寄付については懸念や疑問が示された。仮に認めるにしても、「寄付先を限定すべき」、「消費者に対する回復を優先すべき」、「何らかの指針を設けるべき」などの対案が出された。
山本和彦座長は、「今回は具体的な提案を元に議論を深めることができた。ある程度方向性は見えたと思うので、事務局としては拙速を避け、取りまとめに向けた議論を進めてほしい」と結んだ。
【田代 宏】