「夜間の視力」改め「暗所での視力」 栄養機能食品制度見直し検討会、機能表示文言の改正案も合意
栄養機能食品制度を見直すために消費者庁が立ち上げた「栄養機能食品に関する検討会」(座長:佐々木敏・東京大学名誉教授)。今月8日に都内で行われた初会合では、栄養機能食品における栄養成分の機能表示の文言の見直しも議論され、消費者庁が取りまとめた見直し案の一部が了承された。
保健機能食品の1つである栄養機能食品の制度は、2001年の創設以来、大きな見直しが行われぬまま現在に至る。その中で、今回の検討会の審議事項は大きく3つ。まず、栄養機能食品として機能表示が可能な栄養成分の1日あたり摂取目安量における下限値・上限値。次に、制度創設以来これまでに一度も見直されたことのない「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」などといった各栄養成分の機能表示の文言、そして摂取上の注意事項──以上の3つの食品表示基準(内閣府令)に定められている規定を見直すことになった。
検討会は8日の初会合で、各栄養成分の下限値・上限値について同庁が示した見直し案を審議し、了承した(10月11日付既報)。加えて、機能表示の文言についても審議を一部行い、同庁が用意した見直し案を了承した。
同庁が示した機能表示文言の見直し案は下の図のとおり(第1回検討会配布資料に基づき編集部で作成)。「見直し原案」のうち黒字で記載の機能表示が検討会の了承が得られた見直し案。一方、赤字については次回会合で文言の修正が検討されることになる。

機能表示の文言の見直し原案を見ると、ビタミンCやビタミンKなど一部の栄養成分について、「日本人の食事摂取基準」を踏まえた新規の機能表示がみられる。また、機能を表示できる20種類の栄養成分のうち唯一、ビタミンAに規定されている視力に関する機能表示について、現行の「夜間の視力の維持を助ける栄養素です」を「暗所での視力を正常に保つのを助ける栄養素です」に改める案が示されている。
機能表示の文言の見直し案は、同庁が実施した2度の調査事業を踏まえて作成された。調査事業について具体的には、令和3年度(2021年度)「栄養成分の機能表示等に関する調査・検討事業」と、それに続いて実施した令和5年度(23年度)「栄養機能食品における栄養成分の機能表示の見直しに係る調査事業」。
後者の調査事業で機能表示文言の見直し原案が作成され、見直し原案の文言が分かりやすいかどうかなどを消費者に尋ねる1万人規模の調査(インターネットによるアンケート調査)が行われた。
8日の第1回検討会で了承された機能表示文言の見直し案はいずれも、前記の消費者調査の結果、「分かりやすい」と回答した人の割合が60%以上となったものだ。一方、第2回検討会で見直し原案の修正が検討されるのは60%を下回ったもの。例えば、ビタミンCを対象栄養成分とする「腸管での鉄の吸収を助ける栄養素」は58.8%、ビタミンKを対象とする「血液凝固を正常に保つのを助ける栄養素」は55.6%、ビタミンCおよびEの「抗酸化作用により、細胞を酸化障害から保護するのを助ける栄養素」は38.8%にとどまったという。
同庁は、機能表示文言の見直し原案の修正検討にあたり、令和3年度の調査事業報告書で提言された、「消費者および食品関連事業者が容易に理解でき、かつ、簡潔な栄養成分の機能表示を設定すべき」という観点を重視する考えを示している。
【石川太郎】
関連資料(第1回栄養機能食品に関する検討会配布資料)
:栄養機能食品における栄養成分の機能の文言について(消費者庁のウェブサイトへ)
:栄養機能食品制度の概要について(同上)
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