「クレベリン」の理解促進と信頼回復を 大幸薬品、22年決算発表で
大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)は17日、2022年12月期(2022年1月1日~12月31日)連結決算発表をオンラインで行った。経理部IR担当の中条亨氏が決算概要について、柴田高社長が事業概要について説明した。今期の売上高は50億4,000万円、経常利益は33億5,200万の損失だった。
同社の事業別セグメントは、主に「正露丸」を中心とした医薬品事業と「クレベリン」を中心とする感染管理事業。感染管理事業における需要の急激な減少に加えて、22年1月20日と4月15日に消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けたことにより、対象製品の多くが店頭から一時撤去となると同時に、多額の返品が生じた。
医薬品事業の売上は36億2,400万円
セグメント別では、医薬品事業の売上は36億2,400万円。需要状況が着実に改善してきたが、『セイロガン糖衣A』の一部原材料変更に起因する一時的な生産量低下によって、供給不足が継続した。また、『正露丸』についても、『セイロガン糖衣A』の代替需要や他社製品欠品の影響を受け高い需要状況で推移していることから、供給体制が追い付いておらず、出荷制限をしながらの販売が継続した。国内向けの売上高は対前期比18.6%減の25億2,700万円となった。また、海外向けについても、国内同様、需要は回復傾向にあるが、国内向け生産を優先していることから海外向けの供給数量が不足し、同11.9%減の10億9,700万円となった。
これらの結果、医薬品事業は、同16.7%減の36億2,400万円だった。利益は、売上高の減少や京都工場医薬品生産設備の稼働に伴う減価償却費などの増加などより、同79.8%減の2億9,700万円だった。
「クレベリン」の需要が伸び悩む
感染管理事業は、「クレベリン」6品目に対する景表法に基づく措置命令を受けたことに伴い、多くの販売店で対象製品などの一時撤去、返品が行われたため、売上高は大きく減少したという。措置命令の対象となった製品の表示の見直しは完了しており、リニューアル品の販売を開始したものの、需要は伸び悩み当該返品影響をカバーするまでには至っていないとしている。また、事業再構築の一環として、一部在庫の廃棄や収益性が低下した棚卸資産に対して評価損を計上した。これらの結果、売上高は14億800万円、21億7,900万円の損失だった。
市場への安定供給を図る
今後の見通しとして、来期(23年12月期)は売上79億円、5億3,200円の利益と予想している。国内向け医薬品は、新型コロナウイルス感染症流行前の需要に戻りつつあるなど、堅調な市場動向に加え、他社製品欠品の影響や当期の供給不足に伴う流通在庫の枯渇、インバウンド関連需要の回復といった市場環境のプラスが見込まれる。生産体制を強化し、市場への安定供給を行うと同時に、新規ユーザーの拡大を図るとしている。海外向け医薬品についても、主力の中国や香港、台湾市場において市場需要が回復傾向にあると同時に、当期の供給不足に伴い流通在庫が枯渇していることから、高い需要状況で推移することが見込まれる。国内同様、供給体制を強化し、需要への対応を図ると同時に、販売チャネルの拡大・深耕を図るとしている。
「クレベリン」の製品訴求力を向上させる
感染管理事業の国内一般用製品については、「クレベリン」のさらなる理解促進と信頼醸成を図るため、大学や研究機関との共同研究による二酸化塩素の有効性や安全性に関する試験結果や論文などの情報発信の強化を行うと同時に、二酸化塩素の有効性に関わる規格化や製品訴求力の向上を目的とした行政とのコミュニケーション強化を図る。
一方、業務用製品については、製品ラインアップを生かした新規顧客へのアプローチ強化やエビデンスをベースにした新たな用途開発などに努める。海外向けについては、営業・マーケティングを強化している中国、台湾を中心にさらなる売上増加を目指すと同時に、市場に合わせた新製品の投入などを行う。来期の感染管理事業は、22億5,400万円の売上高を予想している。また、今期の感染管理事業における多額の返品や棚卸資産の評価損などがないことから、売上総利益率は大きく改善する見込みだという。利益は5億3,200万円を予想している。
「絶対に黒字を達成する」(柴田社長)
柴田社長は冒頭、「23年度は絶対に黒字を達成するため、全社一丸となって取り組む」と話した。その上で、「カスタマーファースト、エビデンスファーストで健康社会に必要とされる企業に変わる」という経営方針を立てる。医薬品事業は、原点の「ラッパ・ブランド」を再成長させるため、品質・生産体制を見直し、中国市場含め商品の安定供給を図るとした。今後、インバウンド需要の復活が予想されるため、「ラッパ・ブランド」の棚を確保できるよう努める。「クレベリン」に関しては、二酸化塩素に特化したスペシャルファーマであるという原点に立ち返り、二酸化塩素の規格化を目指すなど、「クレベリン」のさらなる理解促進と信頼醸成の必要性を強調した。
また、構造改革による事業仕分け、組織のスリム化、コスト削減、今後のサステナビリティに対応できる経営体制に変革するとした。
「クレベリン」パッケージリニューアル後の販売状況に関する質問に対して、「ヘビーユーザーは製品性能を理解してもらえているため影響はないが、新規の消費者に対しては訴求点が乏しい」と分析。「しっかりと訴求できるポイント、コミュニケーションを見直し、信頼を回復できるよう努力する」とした。
【藤田 勇一】
(冒頭の写真:右から柴田高社長、中条亨氏)
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