アフィリエイトの責任は広告主にある
新経連は慎重な検討求める
消費者庁は27日に示した「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書(案)で、「アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用に係る基本的な考え方」として、アフィリエイト広告の責任は広告主にあるとの提言を示した。
(一社)新経済連盟(東京都港区、三木谷浩史代表理事)は同日、アジアインターネット日本連盟と連名で、内閣府特命担当大臣、消費者庁長官などの関係各所に宛てて意見を提出したことを公表した。同連盟は意見書で同検討会に慎重な議論を求めている。
アフィリエイト広告等に関する検討会は、近年問題化している悪質なアフィリエイト広告の規制の在り方について、昨年6月から11月まで5回にわたって消費者庁が開催している有識者会議。
アフィリエイト広告とは、広告主の依頼を受けたASP(アプリケーションサービスプロバイダ)がアフィリエイターを募り、応募したアフィリエイターが広告主の商品やサービスに関する広告を作成。アフィリエイトサイト上に広告主のウェブサイトに遷移するリンクやバナーを表示し、自身のブログなどに広告を掲載する仕組み。消費者はアフィリエイト広告を通じて、広告主のウェブサイトで商品やサービスを購入することになる。
問題とされるのは、アフィリエイト広告が成果報酬制を導入しているため、アフィリエイターが報酬を求めて虚偽誇大な広告を行うインセンティブが働きやすく、実際、そのようなアフィリエイターが存在し、消費者被害も起きている点。また、一部悪質なASPやその指導を行うコンサルタントなどの存在も問題視されてきた。
検討会では、景品表示法上の考え方から、広告の責任は広告主にあるとの前提で議論が進められたものの、広告主がすべてのアフィリエイト広告を管理することは事実上難しい。広告主だけではなくASPやアフィリエイターにも罰則を適用できないかとの意見が出されてきた。
アフィリエイターに規制を求める消費者団体
消費者団体サイドに立つ委員からは、健康増進法65条(誇大表示の禁止)や薬機法66条(誇大広告等)も活用しつつアフィリエイト広告の不当表示を抑えていく手段を講じる必要性があるとの強硬な意見も出た。さらに踏み込み、消費者契約法第5条で規定する「委託」条項を景品表示法にも定めることで、アフィリエイターを規制する。景品表示法にも「何人」規定を設ける。さらに特定商取引法に定める「業務禁止」規定を景表法にも定めよとの意見も。
これに対して業界サイドは、全てを広告主の責任にされると関係のない個人のブログで書かれたものまで広告主の責任にされ、アフィリエイト自体を活用できなくなってしまう。広告主の責任範囲を明確にしてほしい、などと要望していた。
「ASP」「アフィリエイター」への規制は見送りに
消費者庁が重視したのは、「景品表示法の枠内で講じることのできる対策」。最終的に示した報告書(案)では、ASPやアフィリエイターはあくまで広告主の指示の下でアフィリエイト広告を提供する際の機能を果たしているに過ぎず、「アフィリエイト広告の責任は広告主にある」とした。
また、ASPやアフィリエイターに対する規制は見送られた。消費者庁によれば、「商品・サービスの取引に関連する事項についての表示を規制するのが景表法。ASPやアフィリエイターはその商品の取り引きに関連しているわけではなく、商品・サービスの提供ができますという広告宣伝に関連しているにとどまる。取引に関連しない人たちを対象とすると、大変な作業になる。課題としてはあるが、慎重に検討する必要がある」と述べている。
これに対して新経連は、「アフィリエイト広告の健全な発展と悪質業者対策が両立するような対策とすべき」、「健全な事業活動を行う事業者に過大な負担を強いることでアフィリエイト広告の利用を困難にすることのないようにすべき」との意見を提出。
問題のあるアフィリエイト広告、表示内容の決定に関与していない広告に対してまで広告主に責任を負わせようとする報告書(案)に対して反対の立場を取っている。
最終的な報告書の取りまとめはきょう(28日)午前9時半から行われる。
【田代 宏】