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美容「HIFU」で顔面障害が多発 消費者安全調査委、規制へ向け各省庁に意見

 美容クリニックやエステサロンで、顔のたるみやしわ、ほうれい線の解消などを目的とした新しい施術法として広がりをみせてきたHIFU(High Intensity Focused Ultrasound)。スマホで「HIFU」と検索すると、さまざまな美容クリニックやエステ、ニューマシンに関する美しい宣伝文句があふれている。

 他方、HIFU施術によるトラブルは年々増加している。2015年、事故情報データバンクに最初の事故が報告されてから過去8年で135件に達した。中でも、エステティックサロンにおける事故がその7割を占めている。このような事態を受けて消費者安全調査委員会(消費者事故調)は29日、多発する美容HIFU事故の防止に向けて、HIFU施術に一定の規制を設けるよう各省庁に対して提言を行った。

 (独)国民生活センターはすでに17年3月、エステティックサロンでのHIFU機器の施術トラブルについて注意喚起を実施し、HIFU機器のような侵襲性の高い機器を医師以外の人が使用すると、医師法に抵触する恐れがあると指摘していた。
 15年以降、増加が顕著となったHIFU事故に対し、21年7月30日、事故調が本格調査に乗り出した。調査対象を事業者だけではなく、施術を行うエステティシャンや利用者まで拡大。意識調査だけでなく、その認識や経験の有無などについても確認してきた。

 今回、事故調の報告によれば、エステティック業界の主要団体では現在、加盟するエステサロン1,700店舗でHIFU施術を禁止としているものの、これはエステサロン全体(約2万4,000店舗)の約7%に過ぎない。

 HIFU事故を部位別に見ると、顔への傷病が94件(70%)と最も多く、他では下半身10件(7%)、上半身7件(5%)、腹6件(5%)、部位不明18件(13%)となっている。
 傷病の内容は、熱傷61件、皮膚障害25件、神経・感覚の障害15件の順だが、「神経・感覚の障害は全て顔で発生している」と報告。

 消費者事故調は聴き取りによる事例を紹介している。以下にその一部を紹介する。
 「3カ月前施術を受け、顔面の一部に麻痺症状が残った。家で鏡を見たら、右の上唇、口角がだらりと伸びきった感じで麻痺。その後、麻痺が直らず」、「4カ月前に9回目を受けいつもより痛みがあった。痺れで下を向くと無意識によだれが垂れる。2カ月経っても右口角の麻痺が消えない」、「目の上側と下側にもプロープを当てた。施術終了から3~4時間後に左目に靄(もや)がかかったような違和感があり、翌日明らかに目の中心部がかすんで白くぼやけた。大学病院で受診し、何度か検査した後に手術」。

 消費者事故調では、HIFU施術者と利用者にアンケート調査を行った。
 それによると、美容クリニックやエステティックサロン、セルフエステで使用しているHIFU機器の性能に差はなく、そのほとんどが輸入品。美容クリニックは、輸入代行業者を通じて未承認の医療機器として医師が個人輸入。医師のいないエステティックサロンなどでは、医療機器ではない製品を雑品とすることで輸入しているものと推定されるとしている。

 また、施術者に対する機器の説明や施術の教育が十分ではなく、利用者に対する説明も不十分なため、利用者にHIFU施術のリスク認識が欠如していた。シミュレーション解析によって生体への影響を調べて事故原因を探ったところ、HIFU施術では、施術が適切に行われなければ、顔面皮下にある顔面軟部組織を支える筋膜の周囲にも熱影響を及ぼし、神経障害を起こすリスクがある。また、HIFU施術は生体への熱影響を抑えながら有効性が期待できるようにするには、機器の設定出力や照射方法を狭い範囲で適切に行わなければならない難しい施術である――ことが明らかとなった。そして、この施術を行うためには、神経や血管の位置などの解剖学の知識が必要だという。

厚労省・経産省・消費者庁に意見

 これらのことを総合的に勘案し、消費者事故調は各省庁に対して一定の規制を設けるように意見した。
 
 厚生労働省に対して、HIFU施術を医師法17条「医業」に係る医行為とし、HIFU施術を医行為として限定すること。
HIFU機器のような「人の身体の構造または機能に影響を及ぼす目的を持つ機器」は、医薬品医療機器等法第2条第4項に規定する医療機器に該当する可能性があるため、医療機器として承認を受けていない機器の国内販売を禁止すること。
 HIFU機器の医療機器該当性の確認や承認のない機器の流通の防止に向け、情報提供を財務省関税局や自治体の関係機関に行い、輸入機器流通の監視を強化すること。

 経済産業省へは、エステティック業界への広範な注意喚起を行うために、エステティック業界団体と協力の上、団体未加盟の店舗に広く周知し、注意喚起を行うこと。

 消費者庁に対して、HIFU施術のリスクについて、SNSなどを最大限に活用して消費者に広く周知し、注意喚起することなどを求めている。

【田代 宏】

(冒頭の画像:消費者安全調査委員会の発表資料より加工転載)

消費者安全調査委員会の報告書はこちら(消費者庁ホームページより)

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エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故 : 消費者庁

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