加工食品「期限表示」の実態調査公表 食品ロス削減へ向け、ガイドライン見直しへ
消費者庁は、加工食品の期限表示の実態把握のため、2024年度に全国の食品関連事業者を対象とした大規模調査を実施した。23日にその結果を公表した。同調査は、食品ロス削減推進法やSDGsの目標達成に向けた一環であり、「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(2005年策定)の見直しを視野に入れた取り組みとして行われた。同ガイドラインは今年3月28日に改正、公表されている。
調査は2段階で構成され、まず同年7月~8月にかけてWebアンケート(有効回答585社)を実施し、その後、「水産事業者」、「加工食品事業者」、「菓子事業者」、「製パン事業者」、「青果物事業者」、「中食事業者」、「入試品事業者」、「洋菓子事業者」、「調味料事業者」、「飲料事業者」の10業種の事業者に対して詳細なヒアリングが行われた。
調査項目は、「期限表示設定について」、「期限設定後のチルド食品の保管温度及び出荷期限について」、「食品ロス削減に向けた取組について」の3項目。以下に、その主な内容を整理する。
期限設定の根拠は「微生物試験」が中心
消費期限および賞味期限の設定にあたり、多くの事業者が最も重視しているのは微生物試験である。アンケート結果では、消費期限の指標として「一般生菌数」や「大腸菌群数」が広く用いられており、ヒアリングでも同様の傾向が確認された。
一方で、賞味期限の設定では、官能検査の指標において「味」が最も多く、「色味・見た目」、「香り」が続いた。
理化学試験・微生物試験・官能検査以外の指標について、全体の回答数が973件で、「あてはまるものはない」(47.1%)が最も多く、次いで「(腐敗等に関する)経験則」(41.7%)だった。
安全係数の運用にはばらつきも
期限を決定する際の「安全係数」については、多くの事業者が「0.8~0.99」に設定していた。次いで「0.70~0.79」(30.0%)、「安全係数は設けていない」(18.2%)となっている。カテゴリーごとの内訳をみると、フローズンチルド(FC)食品以外のカテゴリーでは「0.80~0.99」が、FC食品では「0.70~0.79」が最も多い。
表示方式と保存試験の温度設定
賞味期限が3カ月を超える商品では「年月日表示」が主流であり、「年月表示」ではトレーサビリティ確保が困難との理由が挙がった。また、保存試験における温度条件は、チルド食品では10℃、常温品では25℃、冷凍品では-18℃以下が標準とされるが、一部では加速度試験として30~35℃で実施する企業もあった。
食品ロス削減の工夫と課題
約4割の企業が賞味・消費期限の延長に向けた取り組みを実施しており、保存試験の再実施、包材や配合の見直し、安全係数の再設定などが主な施策であった。しかし、野菜など原材料由来の菌数が不安定であることや、冷温流通体制の課題、安全性確保のためのコスト増といった障壁も浮かび上がった。
また、賞味期限間近の食品を格安で販売したり、賞味期限が2日・3日の商品を社員に無償で提供している、フードバンクへの寄贈などで一部有効活用されていたが、期限を過ぎた食品を「食べられる」と判断して活用している企業は少数にとどまった。

【田代 宏】
発表資料はこちら(消費者庁HPより)