健食関係企業にアンケートを実施 GMP認証の義務化、健康食品の法制化を求める声も
原材料事業者、最終製品受託製造事業者、最終商品販売事業者200社を対象に、平成14年通知・17年通知に対する認知度や通知改正に向けた各事業者の準備状況、原材料の品質担保方法、GMP認証の取得状況などを聞いた。有効回答数は105社、回答率は52.5%だった。アンケート実施期間は2月8日~3月29日。
平成14年通知の認知度「よく知っている」39%
アンケートは、健康食品の原材料事業者や最終製品受託製造事業者、最終製品販売企業を対象に実施した。
平成14年通知(健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領)について、その認知度を聞いた。「聞いたことはあるが内容はよく知らない」が最も多く47%だった。「内容も含めてよく知っている」は39%、「聞いたこともない」とする事業者が15%という結果となった。
その上で平成14年通知が今年3月上旬に改正予定であることを知っているかどうか尋ねた(アンケート作成時期:1月下旬)。「改正点も含めて知っている」としたのは20%で、改正自体は「知っているが改正内容までは十分把握していない」が49%を占め、改正自体を「知らない」は31%となった。
「改正点も含めて知っている」と回答した事業者に対して、改正点に対する疑問や不満などについて意見を求めた。ある原材料メーカーは、「健康被害情報の収集について、事業者および事業者団体が積極的に参画できる全体スキームを、中長期的に行政と協業していく必要があると感じる」と回答。また、ある最終製品販売事業者は、内容は理解できるとしながらも、「サプリメントを食品の一部で運用することに無理がある。新たなジャンルを設けるなど整理の必要性がある」と回答した。


平成17年通知の認知度「よく知っている」47%
平成17年通知(「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」)について、その認知度を聞いた。「内容も含めてよく知っている」が47%と最も多く、次いで「知っているが内容はよく知らない」が40%、「聞いたことがない」は13%となった。
今年1月下旬に改正予定であることを知っているかという問い(アンケート作成時:1月下旬。実際は3月上旬に改正)に対して、「改正点も含めて知っている」が23%、「知っているが改正内容までは知らない」が43%となった。
改正予定を「知っている」とした各事業者に対して、改正に対応するための準備状況を確認。「進めている」としたのは28%、「改正通知の施行後に進める」が48%、25%は「進めていない」と回答した。改正に対してある原材料メーカーからは、「諸外国とのレギュレーションを鑑み、健康食品GMPに関しては、国や行政の積極的な関与が必要だ」とする声が聞かれた。また、ASEANの基準に合致するようなGMPレベルの認証を求める声もあった。



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配合原料の品質担保 GMP認証工場での製造が47%
最終製品の製造・販売事業者および受託製造事業者に対して、最終製品に配合する原材料の品質担保の方法について尋ねた。「原材料GMP認証工場」での製造が47%、原材料標準書によるチェックが同じく47%という結果となった。そのほか、少数意見ではあるが「cGMP準拠」、「原料規格所、調査書、試験成績所の確認」、「自社基準」などがあった。
また、全ての製造事業者に対して、主要工場のGMP認証取得状況について確認した。64%の事業者が「取得している」と回答。「取得していない」が31%、「今後取得する」は4%となった。
取得している事業者に対して、どのGMP認証を取得しているか聞いた。「(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)の健康食品GMP(製造および包装の両方)」が最も多く40%を占めた。次いで、JHNFAの健康食品GMP(製造および包装の両方)にプラスしてNSF InternationalなどのcGMPを取得しているケースが13%、JHNFAの健康食品GMP(原材料)をプラスして取得するケースが10%などとなった。(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)の原材料GMPは7%、「JHNFAの健康食品GMP(原材料)とJIHFSの原材料GMPを取得」「NSF InternationalなどのcGMPのみ」、「JHNFAの健康食品GMP(製造および包装の両方)とJIHFSの原材料GMP」、「JHNFAの健康食品GMP(製造および包装の両方)とJIHFSの健康食品GMP」を取得が3%だった。
また、いずれも取得していない理由としては、「FSSC22000」や「米国本社によるcGMP」での対応の他、「医薬品GMPを取得しており、健康食品GMP以上の品質管理を行っている」という声もあった。


GMP認証取得の必要性 製品価値を高める要素に
次に、最終製品を販売している事業者に対して、販売する自社の製品を製造する工場がGMP認証を取得している必要があるかどうか尋ねた。「どちらかと言えば取得している必要性がある」が69%と大半を占め、「必ず取得している必要がある」(18%)と合わせると約8割が取得の必要性を感じている結果に。中でも「必ず取得している必要がある」とした事業者からは、その理由として、「品質の担保」、「信頼性」、「社内開発規程」、「最終製品の安全性、品質を顧客に保証する上で必要」──などといった声が聞かれた。「どちらかと言えば必要」とした事業者からも、「製品の価値を高める1つの要素にもなる」「海外取引において必須条件となっている」といった声や、消費者を含め顧客にとって安心材料になることを、GMP認証を必要としている理由にする声が多く聞かれた。
一方で、「取得している必要はない」とするその理由は、「FSSC認証で対応できる」、「GMPに準拠した衛生管理、品質管理に基づき製造していれば良い」が挙がった。また、「GMP認証を取得しているからと言って不良品を出さない訳ではない」という理由で、その必要性を重要視してないケースもあった。

原材料におけるGMP認証 必須は8%
次に、最終製品を販売している事業者に対して、販売する最終製品に配合する原材料がGMP認証工場で製造されている必要があるかどうか尋ねた。結果は、「必ずしもGMP認証工場で製造されている必要はない」が最も多く78%を占め、「必ずGMP認証工場で製造されている必要がある」としたのは8%だった。「必要はない」理由としては、「輸出国によってはGMPよりもFSSC22000を求められるケースがあるため」、「GMPに相当する自主管理ができていれば良い」、「提出される資料で一定以上の品質が担保されていることが確認できれば必要ない」──などといった意見が寄せられた。
逆に、植物抽出物などの原材料製造・販売を行う事業者に対し、原材料の安全性を確認するためどのような試験を行っているかについて尋ねたところ、「一部の製品についてヒト試験を行っている」が52%と最も多く、次いで「ヒト試験は行っておらず、一部の製品について毒性試験などを行っている」が19%、「全製品についてヒト試験を行っている」が13%、「ヒト試験も毒性試験なども行っておらず、文献情報のみで安全性を確認している」が10%、「ヒト試験は行っていないが、全製品について毒性試験などを行っている」「一部の製品についてヒト試験を行い、一部製品については文献情報も収集している」が3%となった。

GMPの義務化は必要か 「分からない」が最多36%
最終製品や原材料の品質を管理するためにGMPが義務化される必要があるかどうか尋ねた。結果は、36%が「分からない」と回答。その理由としては、その必要性は感じながらも、事業規模によってはハードルが高くなることから、義務化が参入障壁となる可能性や製造コストが上がることを懸念する意見が多く寄せられた。そのほか、GMPを取得することには賛同する一方で、「FSSC22000など他にも安全性を担保する仕組みはある」として、ケースバイケースで各事業者の取引状況や、取引先のニーズに合わせて品質が管理されればそれでよいのでは──という意見も多く聞かれた。
「分からない」に次いで回答が多かったのは、「最終製品のみ義務化される必要がある」が23%という結果に。その理由としては、「ベトナムへの輸出において必須」、「健康を標ぼうする商品として流通させる以上は、それなりに責任がある」、「まずは川下の製品品質を担保することが先決であり、最終製品のGMP義務化に伴い、必然的に受け入れる原材料の品質も一定条件をクリアする事が求められるようになると考える」といった意見が寄せられた。
次いで、「いずれも義務化されるべきではない」との回答が22%を占めた。「多様な原料も多く、対応出来ないメーカーも多いと思う。これが理由でサプリメントでは使用できないとなると、それは消費者にとっても不利益になる場合もありそう」といった声があった。またここでも、GMPだけが品質管理の方法ではなく、ISOやHACCPなどでも対応できることから、事業者の規模や方針、取引形態、取引先のニーズに応じてケースバイケースで対応すべきとする意見が大半を占めた。一方で、18%が「最終製品、原材料ともに義務化される必要がある」と回答。その理由としては「安全性・品質を確保し、第三者による評価を明確にするため」、「剤形によっては義務化も良い」、「市場も成熟しており、より安全性が重要視されている。これまでのように新規性や差別性のみで安易に原料を選択するのではなく、どのように管理されているのかも確認した上で原料を選択することが重要だと考える」──などといった意見が見られた。

健康食品の法制化 約半数が「必要である」
わが国には、指定成分等含有食品を除き、いわゆる「健康食品」と呼ばれるものには法律上の定義がなく、安全性や品質を担保するための制度が存在しない。そこで今回のアンケートでは、最後の質問として、健康食品に関する法律が必要だと考えるかどうか、またその理由について尋ねた。
結果は、「必要である」が49%と約半数を占め、「どちらとも言えない」が42%、「必要ではない」はわずか8%となった。「必要」と回答した理由としては、いわゆる健康食品の社会的価値や存在意義を明確にするために「現状の曖昧な状況を止めるべき」「一定水準の品質を担保する必要がある」「グローバルスタンダードとのずれ、加工食品のグローバル化に合わせて世界標準にそろえていくべき」──などといった声が上がった。
他にも、「健康ニーズが高まり、期待して購入されている。医薬品レベルではないまでも、製造・品質管理基準が必要」「健康食品は健康産業の1つとして日本の産業の一翼を担うポテンシャルを充分に有していると考えられ、国外レギュレーションとの融和性を考慮しても法律が必要と思う。また、国内においても、消費者だけでなく事業者のリテラシーを向上させる意味でも、法律で一定の明確なルールを示す必要があると考える」「アメリカのDSHEAのような法律があると、さまざまな事柄が整理出来、共通の言語を使うことが出来るようになるため」──といった意見も寄せられた。また、小林製薬㈱が販売する機能性表示食品のサプリメントとの関連が疑われる健康被害の発生を受けて、「より一層その必要性が高まった」と指摘する意見も一定数寄せられた。
一方、「どちらとも言えない」と回答した事業者からは、「規制しすぎることで商品の多様性がなくなる。消費者の選択肢が狭まるなどの弊害もあるのではないか」「自由度がなくなり、大手企業だけの市場になってしまうことを懸念」「伝統的なものの良さもある。それらを全て法制化することを消費者が求めているのかどうか不明」「GMPと同等以上の品質が担保されていれば良いが、一方で消費者の信頼を得るためには法規制も必要」──などといった意見があった。また、「必要ではない」と回答した事業者は、「法規制が結果的に消費者の利益につながるのか見通せない」、「医薬品・医薬部外品との違いが、より曖昧になる可能性がある」「どこからが健康食品かを区分けすることは不可能だと思うから」をその理由にあげた。

【藤田 勇一】
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