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エルゴチオネイン研究が新たな発展 リン酸化TrkBとの関係、ネイチャー系列ジャーナルに論文掲載

 機能性表示食品の機能性関与成分として消費者庁に届け出されているサプリメント成分、エルゴチオネイン(食用キノコのたもぎ茸由来)に関する研究論文が先ごろ、科学誌ネイチャー系列の査読付きオープンアクセスジャーナル『npj Science of Food』に掲載された。

機能性表示食品の根拠論文下敷きに

 機能性表示食品における、認知機能領域ヘルスクレームの科学的根拠として届け出されている論文の臨床試験で得られたデータも活用した新たな研究。たもぎ茸由来のエルゴチオネインを継続的に摂取することで活性化される神経栄養因子(ニュートロフィン)受容体の一種が、認知機能の低下を早期に発見する診断マーカーになり得る可能性があるという。

 この研究は、金沢大学医薬保健学域薬学類の加藤将夫教授らと、タモギ茸由来エルゴチオネインの製造・販売を手がける健康食品関連企業、㈱エル・エスコーポレーション(東京都中央区、鈴木真社長)が共同で行ったもの。

 エル・エスコーポレーションによると、研究の目的は、臨床試験で確認された、同エルゴチオネインの継続摂取に伴う認知機能(記憶力、注意力)向上機能の作用メカニズムの追求。そのために、強い抗酸化作用をもつエルゴチオネインが欠乏した場合の認知機能に及ぼす影響などを調べた。

 論文によると、同エルゴチオネイン無添加のエサを与えたマウスは、添加したエサを与えたマウスと比べて認知機能が低く、脳の海馬の神経新生が低かった。一方で、無添加のエサを与えたマウスに、対照食に含まれるのと同じ量の同エルゴチオネインを補充したところ、認知機能や海馬の神経新生が高まり、血液中や海馬中のエルゴチオネイン濃度も回復したという。

リン酸化TrkB、認知機能の診断マーカーになる可能性

 その上で、学習や記憶の亢進に関与しているとされる神経栄養因子受容体のトロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)を阻害したところ、同エルゴチオネインによる認知機能の回復と海馬の神経変性が阻害されるとともに、TrkBが活性化されることで生じるリン酸化TrkBが海馬で減少。このため、食事やサプリメントなどから取り入れた同エルゴチオネインは、TrkBを活性化させて認知機能を亢進させている可能性が示唆された。

 このことを検証するため、同エルゴチオネインを機能性表示食品の機能性関与成分として届け出るために行った臨床試験で収集し、保管していた被験者の血液サンプルを改めて検査したところ、血液中の血清細胞外小胞からリン酸化TrkBが検出された。その濃度は、同エルゴチオネイン摂取群の方がプラセボ群と比べて有意に高かった。また、同エルゴチオネインを摂取した被験者の血中エルゴチオネイン濃度の他、認知機能の評価指標としたコグニトラックス検査のスコアの両方について、正の相関を示したという。

 この研究結果について、論文の著者陣に名を連ねている同社製造開発部の松本聡執行役員は、「リン酸化TrkBは、認知機能の低下を調べるマーカーとして使える可能性が示唆された。今回の研究で分析できた血液サンプルは少ないため、さらなる検証を進める必要があるが、認知症を早い段階で発見するためのマーカーにもなり得るかもしれない。当社だけでは困難だが、手軽にリン酸化TrkBを測定できるキットの開発に取り組んでみたい」と話す。

 『npj Science of Food』に掲載された研究論文のタイトルは「TrkB phosphorylation in serum extracellular vesicles correlates with cognitive function enhanced by ergothioneine in humans」(和訳:血清細胞外小胞におけるTrkBリン酸化は、ヒトにおけるエルゴチオネインによる認知機能亢進と相関する)。2月に掲載された。

 同論文には、同エルゴチオネインを配合したサプリメントなどを機能性表示食品として届け出るために、エル・エスコーポレーションらが実施し、国内学術誌に投稿した臨床試験論文の主要結果が英訳の上で盛り込まれている。

 機能性関与成分としての同エルゴチオネインは、「中高年の方の記憶力(人や物の名前などを記憶し、後から呼び起こす能力)及び注意力(物事に対して注意を集中して持続させる能力)を維持する機能があります」などといったヘルスクレームで届出が進んでいる。

【石川太郎】

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