No.1表示に関する実態調査報告書 消費者1,000人、広告主15社など対象~消費者庁
No.1表示が半数近い消費者に悪影響を与えていることが分かった。きのう26日、消費者庁は改正景表法が施行される10月1日を前に、No.1表示に関する実態調査報告書を取りまとめ、公表した。
同調査は、商品やサービスの広告において「No.1」や専門家の〇%が推奨といった「高評価%表示」などが実際の事実と異なる場合、消費者に誤解を与えることが懸念されることから、これらの表示の実態を明らかにし、適切な規制の基盤を築く目的で実施された。
報告書では、「売上No.1」、「安さ第1位」などのNo.1表示が急増している理由、誤認しやすい消費者の傾向などを分析し、景品表示法上問題となるケースなどを示している。
No.1表示368サンプルを収集、分析
調査では、実際の広告からNo.1表示を含む368のサンプルを収集し、表示の根拠となる内容や方法について分析した。また、消費者1,000人を対象に、新しい商品を購入する際にNo.1表示が購入意思決定にどれだけ影響するかを今年8月1日~9日までアンケート形式で調査した。
さらに、No.1表示を使用する広告主15社、大手調査会社、事業者団体などに対し、表示の目的、経緯、調査内容に関する認識などについて詳細にヒアリングした。
消費者の半数「表示の影響受ける」と回答
No.1表示では、消費者の4.6%が「かなり影響する」、44.6%が「やや影響する」と回答。高評価%表示では、「かなり影響する」4.7%、「やや影響する」44.8%と、約半数が表示の影響を受けていることが明らかになった。
報告書によると、消費者は特定の状況下でNo.1表示や高評価%表示により強く影響を受けるという傾向が分かった。
例えば、消費者が購入したい商品やサービスについて十分な知識がない場合、他社商品との違いが分からない場合、商品が高額な場合、利用してみないと良さが分からない場合、購入の決め手がない場合、初めて購入する場合などに影響力を及ぼす。
安価な料金で勧誘する調査会社の存在も
このような表示が横行する理由として、多くの広告主が自らの広告の根拠となる調査内容を詳細には理解しておらず、他社の行動を模倣するかたちでNo.1表示を使用している実態が浮かび上がった。
広告主には、「競合他社に見劣りしないようにしたい」という動機が存在しており、その動機を満たすために安価な料金で広告主を勧誘・誘導する調査会社の存在も明らかになった。
「調査会社が適法と言っている」などの理由から内容を確認することなく、安易に不適切な調査を依頼する広告主らの横並びの実態も浮き彫りとなった。
景品表示法上問題となるケース示す
報告書では、No.1表示と高評価%表示などが消費者に誤認を与える原因について、「調査が一般に認められた方法で行われていない」、「調査結果と表示内容が適切に対応していない」、「比較対象が不適切である」などとし、これらの表示が景品表示法上問題となるケースについてそれぞれ具体的に示している。
No.1表示の場合、「○○サービス 満足度No.1」などと表示する場合において、○○に属する同種商品などのうち市場における主要なものの一部または全部を比較対象に含めずに調査を行っている場合、また、インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品などを比較対象として選定しているだけで、市場における主要な同種商品などの一部または全部を比較対象に含めないまま調査を行っている場合としている。
さらに、「比較対照企業選定条件:「〇〇」で検索上位〇社(検索エンジン名)」などの注記についても、記載位置、文字の大きさ、文字の色などを踏まえ、一般消費者にとって明瞭でない方法によって注記がされている場合は、表示内容と調査結果が適切に対応しているとはいえず景品表示法上問題となる恐れがあるとしている。
高評価%表示では、調査回答者が医師かどうかを自己申告により確認するだけで、医師であることを客観的に担保できていない場合、調査対象者である医師の専門分野(専門の診療科など)が、対象商品などを評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない場合、調査対象者である医師が、回答に際して調査会社などから対象商品などの品質・内容について合理的な根拠がない情報の提供を受けている場合を挙げている。
消費者庁は今後、広告主に対して「事業者が講ずべき管理上の措置」に関する普及・啓発を行うとともに、「不当な表示などが疑われる事案に対しては、迅速に指導を行い是正を図ることを含め、引き続き景品表示法に基づき厳正に対処していく」として報告書を結んでいる。
【田代 宏】
報告書はこちら(消費者庁HPより)