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ネオキシンE明治事件(4) 健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<本判決の分析>

本判決を分析する。主な特徴は次の3点と言える。

1点目は、たとえ科学的に有益無害な物であっても、そのことをもって医薬品該当性が否定されることにはならない点である。

販売等会社Xは、『ネオキシンE明治』は自然食品であって有益無害であるから、「標ぼうされた薬効に対する国民の不当な過信を生ずるおそれ」がない(従って医薬品に該当しない)と争った。このような主張は健康食品事業者側からしばしば聞かれる。しかし、高裁はこの主張を明確に否定し、Xの主張を退けた。

その健康食品が有益無害であろうと有害であろうと、医学的効能効果をうたえば、国民の多数の者の「正しい医療を受ける機会」を奪う危険が生じるため、高裁の判断は妥当と言えるだろう。

高裁の判断は、あくまで『ネオキシンE明治』が有益無害な物だったとしても…という仮定での判断であり、高裁が『ネオキシンE明治』を有益無害な物と認めたわけではない。むしろ高裁は、「本件商品について副作用の発現は否定できないことが認められるところから、右商品も決して有益無害なものとは容易に断定できない」と述べ、『ネオキシンE明治』は人の健康に有益無害であるというXの前提自体にも疑義を挟んでいる。

2点目は、商品の効果としてではなく、成分(ビタミンE)の効果として「脳卒中になりにくい」、「リューマチになりにくい」などの薬効がうたわれた点である。

この点について、高裁は「間接的とはいえ、明らかに『ネオキシンE明治』には上記疾病等の予防に効果があるという医薬品的効能効果を標ぼうしていると認められる」と述べ、商品自体の医学的効能効果をうたったものと認定した。

高裁としては、形式上は成分(ビタミンE)の効果としてうたわれたものであっても、「脳卒中になりにくい」、「リューマチになりにくい」など特定の疾病に対する効用を強調し、あたかも現代医学を不要とするかのような表現を用いて、これを原料とする『ネオキシンE明治』を販売することは行き過ぎであるという価値判断が背景にあったと思われる。

成分広告と商品広告を意図的に分けて、前者で薬効をうたう手法はよく見かけるものの、いかなる場合にそれらが商品自体の医薬品的効能効果をうたったものと評価されるかについては明確な基準がない。その意味で、本判決は裁判所の感覚を推し量るための有用な材料の1つになり得る。

3点目は、「販売員向けの小冊子」という社内文書・内部文書が、医薬品該当性判断の根拠資料として用いられた点である。

医薬品該当性は通常一般人の認識を基準として判断されるため、社内文書・内部文書の全てが直ちに医薬品該当性判断の根拠資料になるわけではないと考えられるが、少なくとも消費者と密接に関わる販売マニュアルや応答マニュアルなどについては、薬機法などに抵触する部分がないかどうかを慎重に吟味しておく必要がある。

(了)

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