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セルナーゼ事件(5) 健康食品広告・表示の「判例」解説

赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

<無許可製造の故意>

製造業者のX研究所(X社)の代表取締役であるX1は、本件企画書(X1が作成し、ダイエット食品などの企画・卸売業者であるYへ交付した『セルナーゼ』の説明資料)が、違法な広告に使用されることを予想していなかったなどと主張し、故意の存在を争った。

しかし、控訴審判決は次のように指摘した。

「本件企画書の内容が『セルナーゼ』の医薬品的な効能効果を標ぼうするものであることは明らかであること、本件企画書の文章の一部には、一般消費者自身に向けた宣伝文句としか考えられない表現が用いられていること、X1はYから『これからページに組み込むので、セルナーゼの機能性を持った成分の簡単な詳細を教えてもらいたい』旨の依頼を受けて本件企画書を送ったものであり、X1がYに対し、本件企画書の内容を『セルナーゼ』販売の宣伝に利用することを禁ずるような言動をしたこともなかったことからすれば、X1において本件企画書の内容の全部または一部が、『セルナーゼ』が将来販売される際に、説明・宣伝などに用いられることを認識、認容していたと認められる」。

X1が、製造時において『セルナーゼ』が薬事法(2条1項3号)の医薬品に該当することを認識・認容していたことが認められると判断し、X1の故意を認めた。

<「責任回避のために入れられた文言」と判断>

第一審で弁護人は、本件企画書の各ページの右上に「社内資料」の注意書きがあることを理由に、本件企画書はX1・X社とY限りのものであり、その先の販売業者や最終消費者に交付・転載されることは想定されていなかったと主張した。

しかし、第一審判決は、X1がYに対して何ら注意喚起も行わず、本件企画書の内容を『セルナーゼ』の説明・宣伝に用いないような処置も施されていないこと、X1が捜査段階で「この書類は『セルナーゼ』の発注元であるYに対し、商品の内容を説明するために送ったもので、それをYがどのように使ったとしても私の責任ではない」と供述していたことなどから、上記の注意書きはX1とX社の責任回避のために入れられた文言にすぎないと判断している。控訴審判決はこの点を特段指摘していないが、第一審判決と同様の見解に立つものと思われる。

(つづく)

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