1. HOME
  2. 会員専用記事閲覧
  3. セルナーゼ事件(4) 健康食品広告・表示の「判例」解説

セルナーゼ事件(4) 健康食品広告・表示の「判例」解説

健康食品広告・表示の「判例」解説~セルナーゼ事件(4)
赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

<『セルナーゼ』の医薬品該当性について>

裁判所は、連載の3回目で述べた判断基準に基づいて、『セルナーゼ』が医薬品に該当するかどうかを検討し、医薬品に該当すると判断した。

第一審判決は、「『セルナーゼ』は外観上医薬品に相当程度近似しているとの印象を否めない」と判断した理由について、次の点を挙げた。

(1)PTPシートに包装されたカプセル剤がアルミの袋に入れられて外箱に収納されており、これは医薬品の典型的な包装・剤型と言える。

(2)外箱の外観(白地の箱に青い字で大きく記載された商品名や重量、茶色のカプセルの画像が特徴的)が医薬品的な印象を与える。

(3)『セルナーゼ』の名称も、ことさらに医薬品を想起させるとまでは言えないが、細胞に働きかける作用を暗示しているとも理解でき、外箱に表示された女性のシルエットも、ダイエット効果があることを暗示するものと理解できる。

(4)通常人に容易に理解可能な英文で「体内の水分量を調節」、「スリムな体型を作る」などと、人の身体の構造または機能に影響を及ぼす旨の効能効果が明示されている。

(5)「注意事項」として、妊娠中の使用を控え、薬を服用中の方の医師への相談を促す表記があるなど、食品には通常認められないような記載があること。

控訴審判決もこの判断を支持した。

これに対し、製造業者のX研究所(X社)とX社代表取締役のX1は、『セルナーゼ』のPTPシートの裏面に「栄養補助食品」、外箱の裏側に「コーンシルクエキス含有食品」と記載され、食品であることが明記されていることや、「お召し上がりください」などという医薬品には認められないような記載があることなど理由に、医薬品に該当しないと主張。しかし、いずれも排斥された。

<製造時に想定された販売方法や宣伝内容>

控訴審判決は、製造時に想定された『セルナーゼ』の販売時の演述・宣伝内容について、次のように指摘した。

「Y(ダイエット食品などの企画・卸売業者)からX1に対する『セルナーゼ』の製造依頼の内容や本件企画書の内容を見れば、『セルナーゼ』が、客観的な薬効の有無はともかくとして、含有成分の作用によって、脂肪の減少、体温の上昇、宿便やむくみの解消等の効果を生じさせ、その結果、体重を減少させ、痩身効果をもたらすものとして製造されたこと、すなわち、人の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的とするものとして製造されたことは明らか」。

しかも、薬剤のような茶色いカプセル剤の形状をしており、原材料名の多くが通常聞き慣れないものであることを考えれば、前述したような使用目的や効能効果を何ら説明することなく、一般消費者に販売することは考え難いとし、販売時に含有成分の作用により、痩身効果が期待できる旨の宣伝・広告が行われることは、製造時に当然想定されていたと認定した。

『セルナーゼ』の製造時の外観、製造目的、製造時に想定された一般消費者への販売方法や演述・宣伝などに照らせば、『セルナーゼ』は製造時において薬事法(2条1項3号)の医薬品に該当するという結論である。

(つづく)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ