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つかれず事件(6) 健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<医薬品該当性に関する反対意見>

本件における反対意見と、反対意見に対する補足意見は、医薬品該当性の判断基準を理解する上で、とても有意義であることから紹介する。

反対意見では、「医薬品」に該当するか否かについて、成分や薬理作用の有無のみによってではなく、名称、形状、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、演述・宣伝なども総合して判断すべきであること自体は、多数意見と同様の見解を示している。

しかし、薬事法(現・薬機法)による医薬品規制の趣旨が、(1)医薬品の使用に伴う副作用や中毒など、人または動物の健康に対する危険の防止、および(2)標ぼうされた薬効に対する過度の信頼により、国民が適切な医療を受ける機会を失うことの防止――にあることを前提に、次のような理由を挙げて医薬品該当性を否定した。

・『つかれず』と『つかれず粒』の主成分は、一般に食品として認識されるレモン酢や梅酢の成分と同じクエン酸またはクエン酸ナトリウムである。人の健康上、有益でこそあれ、これを摂取することにより、危険を生ずる恐れはない。

・Xら(有限会社X、X代表取締役のY、X営業課長のZ)は、『つかれず』『つかれず粒』の主成分と、レモン酢や梅酢の成分が同じである旨を製品の袋や紙箱に明記しているばかりでなく、その効能効果を演述・宣伝する際にも、これがあくまで「酢」であることを前提とし、「酢」の人体に対する効用を強調するにとどめている。

こうした点を理由に挙げて、「これが標ぼうされた効能効果に対する国民の判断を不当に惑わす恐れのあるものであるとは考えられない」と述べ、医薬品に該当しないと指摘した。

<反対意見に対する補足意見>

そうした反対意見に対し、多数意見側から次のような補足意見が述べられた。

まず、反対意見が「標ぼうされた効能効果に対する国民の判断を不当に惑わす恐れの有無」を問題にした点について、「人の健康上、有益無害と考えられる物質については、その薬効を標ぼうして販売したからと言って、直ちに『医薬品』に当たると考えるべきではなく、その名称、形状、販売方法などと相まって、標ぼうされた薬効に対する国民の不当な過信を生ずる恐れのないものは、その無許可の製造・販売を刑罰をもって禁圧するだけの実質的根拠はなく、『医薬品』の概念に当たらない」とし、反対意見に賛同した。

しかし、反対意見が「(Xらは)『酢』の人体に対する効用を強調するにとどめている」と指摘した点については、「本件における被告人の行為のなかには、単に『酢』の人体に対する効用を一般的に説いたと言うにとどまらないものがある」と評価した。

つまり、Xらが『つかれず』『つかれず粒』を通信販売するに当たり、同封した宣伝パンフレット(「酢は寿」など)には行き過ぎた記載があったわけである。

「酢こそ寿――酢こそ不老長寿の元であり、世界に誇り教えるべき民族の智恵」、「疲れは酢で二時間で消える――血液正常化に何よりも酢が大切」など「酢」の一般的な効用に関する記述のほか、「酢の薬効」として「医師の多くが投与する…ゴマカシ薬(対症療法の薬)ではなく、酢は体そのものを丈夫にして病気を治そうとする原因療法のクスリです」、「高血圧、糖尿病は酢で治し易い病気である」、「低血圧、貧血、胃下垂を治すのも酢だけです」など、特定の疾病について現代医学は全く無力だが、一方、「酢」は万能であるという趣旨に取れる記載が含まれていた。

(つづく)

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