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つかれず事件(5) 健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<効能効果を宣伝して販売されていた点を考慮>

前回に引き続き、上告審の判例を分析する。薬機法(旧・薬事法)は、次のものを「医薬品」と定義している(2条1項)。

(1)日本薬局方に収められている物。

(2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であって、(1)の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く)。

(3)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

『つかれず』と『つかれず粒』は販売に当たり、高血圧や糖尿病などによく効くという演述・宣伝が行われていたため、『つかれず』と『つかれず粒』が医薬品に該当するかどうかは、(2)の「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」に当たるかどうかという問題となる。

以上を前提に判決を見ると、いずれの判決も、客観的な薬効の有無を全く度外視するわけではないが、客観的な薬効がなければ医薬品には当たらないという杓子定規な見解は取らなかった。医薬品とは「その物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において『人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている』と認められる物」であるとした上で、『つかれず』と『つかれず粒』の形状や成分だけでなく、高血圧・糖尿病・低血圧・貧血・リュウマチなどによく効く旨の効能効果を演述・宣伝して販売されていた点も考慮し、医薬品該当性を認めている。

<正面から認めた初の最高裁判例>

セルナーゼ事件(2018年11月16日から7回連載)を紹介した際にも言及したとおり、医薬品該当性の判断に当たり、「販売時の演述・宣伝」を考慮することが許されるかどうかについては、これを認める厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日薬発第476号)はあったものの、正面から認める最高裁判例は本判決が出るまでなかった。その意味で、本判決の先例的価値は極めて大きい。セルナーゼ事件判決も本判決を踏襲している。

本判決により、医薬品該当性の判断に当たり、「販売時の演述・宣伝」まで考慮できることは明確になった。だが、この判断基準自体が明確かといえば、必ずしもそうではない。上告審判決でも前述したとおり、多数意見は『つかれず』と『つかれず粒』の医薬品該当性を認めたが、反対意見も出ており、上告審を担当した裁判官のなかでも結論が分かれている。

(つづく)

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