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せいちょう事件(4) 健康食品広告・表示の「判例」解説

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<価格、成分、形状なども医薬品を想起>

『せいちょう』の成分は木酢液が多くを占める。木酢液とは、木材を炭化して木炭を製造する際に発生する煙の成分を冷却して得られる水溶液である(80~90%が水分で、残りは酸類やアルコール類などの有機化合物)。木酢液は一般的には液体肥料、病害虫防除、消臭などを目的に販売され、飲料として販売される例は多くない。

また、商品写真がないため判然としないが、「高さ約15cm余の角びん」は一般的に清涼飲料水・栄養飲料に用いられる容器形状とは言えないし、容量100mlながら小売値3,500円という点も、一般的な清涼飲料水・栄養飲料に比べて大幅に高価である(むしろ医薬品に近い印象を与えると言えるだろう)。

これら「成分」「形状」なども、通常人をして清涼飲料水・栄養飲料ではなく、医薬品を想起させやすいものと言えるだろう。

Y社(製造販売会社)が従来から製造していた医薬品『アトム』(無許可製造医薬品)よりも効き目の良い新製品の製造を計画し、その結果、『せいちょう』が開発・製造されたという経緯(X(販売担当者)は計画者の1員のようである)がある。もし、そのような開発経緯が商品説明書やパンフレットに記載されるなどして、消費者の目に留まるようになっていたのであれば、医薬品該当性の判断に影響する要素になり得ると思われるが、本件では、『せいちょう』が医薬品に該当するとXが認識していたことを裏付けるための事情として挙げられたのではないかと考えられる。

<「医薬品ではない」の表示、結論を左右せず>

本裁判例が示した医薬品該当性の判断基準、『せいちょう』が医薬品に当たるという結論のいずれも妥当と言えるだろう。

医薬品該当性はあくまで「通常人」を基準とし、成分、容器包装、販売方法などを踏まえた総合判断であるため、「医薬品ではない」などの表記を容器包装や商品説明書などに入れたところで、(全く無意味とまでは言わないが)結論を左右するものとはならない。むしろ、そのような表記を入れなければならない時点で、薬機法違反のリスクが現実化していることを自覚しなければならないだろう。

なお、本件が立件に至った主な要因は、取引規模の大きさや行為態様の悪質さにあると思われるが、木酢液は原材料や製造方法などによって品質などにばらつきがある。適切な製造方法が実施されないと、有害物質が発生する危険があると考えられ、(健康被害事案の有無は不明であるが)こうした潜在的な健康被害リスクがあることも、立件に至った背景事情の1つだったのかもしれない。

(了)

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