詐欺的定期購入商法の根絶目指す(後)
違反事例に対しては自治体による法執行も
2015年頃から問題化してきた定期購入トラブルに対し、国センは、16年以降、再三にわたって注意を促してきた。しかし、改善の兆しが見られず、17年には、特商法が改正。通販の広告やインターネット通販における申込み・確認画面上に「定期購入契約である旨」、「金額(支払代金の総額等)」、「契約期間」、「その他の販売条件」を表示することが義務づけられた。「インターネット通販における『意に反して契約を申し込みさせようとする行為』に係るガイドライン」も策定された。
自治体も黙ってはいない。埼玉県は、17年2月、健康食品などの定期購入をめぐるトラブルに関して、自治体として初めて国に要望書を提出。特商法が定める義務表示事項に「総額」を明記することを求めた。特商法は、のちに改正されることとなる。
同県では、違反した事業者への行政処分も国に先んじて行っている。19年8月、自社サイトで「いつでも好きな時に解約できる」と謳い、育毛剤を定期購入で販売していたRAVIPAに対し、景表法の措置命令を下した。4月には、インターネット通販でサプリメントを販売していたニコリオに特商法の業務停止命令(3カ月)と景表法の措置命令(有利誤認)をダブルで行った。定期購入の条件を分かりやすく表示していなかったこと、顧客の意に反する申し込みをさせたことが理由だ。
埼玉県は高い問題意識を持って、定期購入問題に取り組んでいるように見えるが、実際はどうなのか。県の担当者に聞いた。「定期購入については、全国でも同様の相談や苦情が寄せられている。したがって、特に積極的というスタンスではないが、法違反の事例があったため、いくつかの行政処分に至った。私どもの業務は消費者からの相談・苦情がすべての元。そこに照らし合わせて、特商法・景表法のどちらを適用していくのかが適切かを判断し、今後も業務を遂行していく」。
施策を組み合わせて実効的な対策を
「2020年消費者白書」によれば、19年の1年間だけで、4万4,370件もの相談が寄せられた。前年比2倍、この5年間で10倍になっている。最近では、消費者庁も監視を強化しているが、定期購入商法には、今後、さらなる規制の網がかけられる。「特商法・預託法検討委員会」が昨年夏に取りまとめた報告書では、以下のような骨子が示されている。
・「いつでも解約できる」と表示しながら、実際には電話がつながらないなど、事業者が消費者の解約を妨害する悪質な行為を禁止。解約権など、民事ルールの創設
・「インターネット通販における『意に反して契約を申し込みさせようとする行為』に係るガイドライン」の見直し
・「顧客の意に反して契約させようとする行為」の禁止。法律の条文に盛り込み、罰則も設ける
検討委員からは「情報連携して悪質商法の芽を早めに摘み取る早期のアラートの仕組みを」といった声も聞かれたようだ。法案は、今年の通常国会への提出を目指している。「念頭に置いているのは、あくまで悪質事業者にターゲットを絞った規制。報告書の提言を踏まえ、健全な事業者の日常的な活動や将来のイノベーションを阻害しないよう十分配慮しながら、今後、具体的な制度設計を行って行くことになる」(消費者庁取引対策課)。
定期購入トラブルの解決には、消費者団体も大きな役割を果たしている。特定適格消費者団体の京都消費者契約ネットワークは、これまでも不適切な広告を行う事業者に対し、表示の差し止めなどを求めてきた。事業者が表示を改めるきっかけになった事案も多数ある。昨年6月には、自社サイトでサプリメント「王妃のめぐみ」を販売するファンソルの広告で、初回1袋だけを100円で購入できるかのような表示が景表法に牴触するとして、広告の差し止め請求を行った。ファンソルはこれに応じて表示を中止。その後、8月には、ファンソルに対し、消費者支援機構関西が「希望者には全額返金を行うこと」などを申し入れている。法規制の強化のみならず、違反した場合の法執行や消費者団体との連携など、いくつかの施策を組み合わせることで、実効力をあげることができるのではないか。今後の動向を注視したい。
(了)
【大原 典子】
(図表:PIO-NETにみるインターネット通販の受付年月別相談件数と割合の推移/国民生活センターのホームページより)