健康食品広告・表示の「判例」解説~つかれず事件(7)

堤半蔵門法律事務所 弁護士 堤 世浩 氏

<重要となる「国民の不当な過信の有無」の視点>

 前回に引き続き、反対意見に対する補足意見を見ていく。

 補足意見では、「酢」の一般的な効用を説くこと自体は自由であるとしても、その効用を極端に強調し、特定の疾病に対して現代医学は無力であるが、「酢」は万能であり、「酢」を飲んでさえいれば、これらの疾病から必ず解放されるかのような宣伝を行って、「酢」を原料とする特定の製品を販売することは、やはり行き過ぎであると言わざるを得ないと述べている。

 そうした宣伝によって『つかれず』『つかれず粒』を販売する場合は、その名称・形状が一般の「医薬品」とかなりの類似性を有することと相まって、「標ぼうされた製品の薬効に対し、国民の不当な過信を招く恐れがないとは言えない」とし、『つかれず』『つかれず粒』の医薬品該当性は否定しがたいと結論づけた。

 本件は、最高裁として医薬品該当性の判断基準を定立しただけでなく、その適用レベルにおいても結論がどちらに転んでもおかしくなかった事案であり、医薬品該当性判断を理解する上で非常に有意義な事案と言える。特に、「標ぼうされた薬効に対する国民の不当な過信の有無」という視点は、健康食品の広告内容を吟味・検討する上で極めて重要なものになるだろう。

 

<「医薬品該当性」以外の論点>

 本件では、医薬品該当性以外の論点もいくつか取り上げられた。特に以下の点は、裁判所が具体的事実を拾い上げて評価・判断したものであり、実務上で参考になると思われる。

 弁護人はZについて、被告会社Xの営業課長の肩書を有していたものの、一従業員であり、代表取締役であるYの指示に従って機械的に販売を担当していたに過ぎないばかりか、Yとの間に本件犯行に関する意思の連絡さえなかったことから、Yと共謀した事実はないなどと主張した。

 しかし、控訴審判決は、Zが1975年7月に営業課長としてXに入社し、それ以後、従業員の最高責任者として、同社の従業員や作業員を指揮・監督し、『つかれず』『つかれず粒』の販売、商品の発送、代金の回収、帳簿類の点検、顧客からの質問や苦情の処理、仕入れ関係の連絡などの事務を行い、会社業務全般を統括していたと指摘。また、代表取締役のYとともに、『つかれず』『つかれず粒』の価格決定、宣伝文の内容、配布チラシの選定なども行っていたことを挙げて、「Yと共謀して『つかれず』『つかれず粒』を販売していたことは明らか」とし、YとZの共謀を認め、弁護人の主張を退けた。

 

<「量刑不当」も認められないと判断>

 弁護人は、犯情に照らして量刑が重すぎるとも主張。これに対し、控訴審判決は以下の点を指摘した。

 ・Xら(有限会社X、X代表取締役のY、X営業課長のZ)は、76年5月中旬頃~77年11月上旬頃までの間、136回にわたって合計29人に、『つかれず』『つかれず粒』を合計644万6,000円で販売した。

 ・Xらは、販売活動を多くの従業員を使用して組織的に長期にわたって大規模に行い、年間売上高は一時2億円を超えた。

 ・東京都の行政指導に対しても十分に対応していなかった。

 これらの理由を挙げて、「量刑不当」とは認められないと判断した。

(了)

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