対談・通販業界は原点へ

 健康食品や化粧品などの通信販売業界では、EC販売全盛の時代からSNS発信、さらには再び紙媒体へ回帰する動きもある。また、新規購入の安さと2回目購入のギャップ、物流問題など、マーケットの拡大に伴ってさまざまな課題が指摘される。通販をめぐる課題をテーマに、(株)未来館の西野博道社長と(株)DMCの高橋貞光社長が対談した。

 

(株)未来館 取締役社長 西野 博道 氏

 やずやの情報システムの開発導入や事業部門の立ち上げを行った通販事業の先駆者。1998年、(株)九州自然館をやずやの事業部から分社化。創業4年で年商23億円の企業に育てた。初回客をリピート顧客へと育成し、初回顧客の残存率を最大化させる「顧客ポートフォリオマネジメント理論」の開発者でもある。

(株)DMC 代表取締役社長 高橋 貞光 氏

 (株)えがお在職中に経営企画、管理部門、システム、物流、コールセンターの責任者など全ての部門を経験。入社から5年で(株)えがおの売上高を44億円から262億円まで成長させた功労者。現在、東京で「通販実践6カ月集中講座」を(株)ウェルネスニュースグループと展開している。

 

<CRMでスタートした商品はロングセラーに>

 高橋 業界全体を俯瞰すればCPO(Cost Per Order)、つまり新規顧客1件当たりにかかった広告費用を下げるために工夫せずに安売りだけを行っているなど、お客様への関わり方の基本が忘れられているのではないかと危惧している。

 西野 健康食品や化粧品は本来、その商品からイメージする身体機能などの実感がなかなか得られないもの。今日飲んだ、使ったからといって、明日から一気に変わるわけではない。しかし、すぐに変われそうに表現しているのが、今日の業界の傾向ではないかと感じている。本来、通信販売は初回購入だけでは採算性が取れないために、末長い関係性につなげてリピートしていくなかで少しずつ利益を得ていた。これがCRM(Customer Relationship Management)につながっていた。効能効果ではなく、自社商品の品質の良さを訴え続けていた。だから、末長く関係が続いていたのではないかと感じている。

 

<作り手の目的が見えにくい>

 高橋 コンセプトに沿った商品開発、何の目的で誰をターゲットにどのように販売するのか。それが明確になっていないケースが多いと思う。例えば酸っぱくない酢を販売するにしても、酢は体に良い、それをどうお客様に伝えられるかは基本ができていなければ伝えられない。

 西野 かつては商品開発から発売まで1~2年かけていたものだ。でも今は、商品開発にかける日数は数カ月が平均的。それは市場にある今売れている商品と似たような商品を作っているからできることではないか。

 高橋 効能効果よりも、どうしてあなたにこの商品を提供するのか、どうやって誕生したのか。それを語ることが大事だということ。かつては業界のリーディングカンパニーに、理念から生まれた方針やストーリーがあった。それが今は少なくなってきている。また、OEMもいろいろな会社が手がけているから簡単にできる。すると、どういうプロセスや目的でこの商品が出来上がっているのかがわからないから、お客様は迷ってしまう。

 西野 通信販売の広告費が回収できるには1年以上かかるのが普通だが、最近のCPOの高騰に対応するため、定期コースへの誘導などにより3カ月で広告費が回収できるというところもある。そのため、「稼働顧客(過去1年間に1回以上購入した顧客のこと)を末長く育てよう」ということが無視されているのではないかと感じている。稼働顧客数を増やすためには、新規で集客する、現在の稼働顧客を減らさない、離脱した非稼働顧客(離脱顧客)を復活させる、この3つしかない。稼働顧客数を増やすことに意識がいかなくて、LTV(Life Time Value)だけしか見ていない会社がある。LTVというのは稼働顧客が増加した後に発生するアウトカムであるのに、この稼働顧客を意識せずにLTVだけを増加させようとしている。だからLTVは少し高くなったが、それ以上に稼働顧客数が減少するために売上が伸びないのではないかと感じている。

 【文・構成:堂上 昌幸】

(写真:対談する西野氏(右)と高橋氏)

※詳細は「Wellness Monthly Report No.8」(2月28日発刊)に掲載。

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