健康食品広告・表示の「判例」解説~“バイブル本商法”事件(1)

赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

 

<出版社の刑事責任が問われた事件>

 健康食品の効能効果を標ぼうする書籍を出版した出版社の刑事責任が問われた事案(横浜地裁2013510日判決)を紹介する。本判決で示された「医薬品」の該当性、「広告」の該当性についての判断は、健康食品の広告を理解する上で大いに参考になる。

 最初に登場人物を確認する。A社は、書籍・雑誌の出版や販売などを営む会社。BはA社の代表取締役、CはA社の編集担当責任者である。D社は、キチン・キトサンなどの繊維質とレシチンやビタミンなどの栄養素を含有した健康食品の製造・販売・輸出入などを営む会社。EはD社の代表取締役である。

 事件の概要を説明する。D社は商品名「甲」というキトサン含有の錠剤(瓶入り)を製造販売していた。A社の代表であるBは営業活動の一環として、D社のEに対し、「甲」についてタイアップ出版(書籍の出版を希望する者から出版協力費の支払いを受けて書籍を出版し、一般書籍として流通させる)を持ちかけ、Eはこれに応じた。

 Cが編集担当責任者となって編集作業を進め、02年4月頃に「医師・研究者が認めた!私がすすめる『水溶性キトサン』」(以下「本件書籍」)が完成し、合計1万部(定価1,200円)が発行された。そのうちの5,000部をD社が420万円で買い取った。

 本件書籍には、「水溶性キトサンで直腸ガン、肝臓ガンに打ち克つ(71歳・女性)」、「乳ガンから肺へ転移したガンを水溶性キトサンで抑える(49歳・女性)」、「長年苦しんできた喘息がすっかり治まった(57歳・女性)」、「あきらめていたバセドウ氏病が治った(49歳・女性)」などと、水溶性キトサンにより病気が治ったとする体験談を掲載。これとともに、D社の電話番号や「甲」の写真なども掲載した。

 本件書籍は09年8月頃から11年6月頃まで、納品先の某書店各店舗で店員を介して合計4部が販売された。11年9月にも、納品先の某書店各店舗で店員を介して合計4部が陳列棚に並べられた。

 これらの販売・陳列行為について、出版社のBとCが、健康食品会社のEと共謀の上、厚生労働大臣の承認を得ていない医薬品の名称、効能・効果を広告したとして、薬事法(現・薬機法)68条違反(広告禁止違反)の罪で起訴された。A社も両罰規定により、同法違反に問われた。

 本裁判ではA社・B・Cが薬事法上の広告禁止違反の罪に問われたが、D社とEは別の裁判で、薬事法上の広告禁止違反、医薬品の無許可販売などの罪に問われた(横浜地裁13年12月5日判決)。

(つづく)

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