健康食品広告・表示の「判例」解説~クロレラチラシ事件(5)

赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

<景表法との関係>

 クロレラチラシ事件について、景品表示法との関係を整理する。健康食品分野では成分広告と商品広告を分離する方法が、しばしば採られている。景表法との関係で言えば、成分広告に商品名の記載がない場合でも、多数の消費者が当該広告で行われた不当な説明に誘導されて、特定の商品購入に至るという「仕組み」が構築されているのであれば、同法の規制対象となり得ることが明らかとなった。

 どのような場合に、その「仕組み」があると認められるかの明確な基準はないが、第一審では、成分広告を見た消費者が商品購入を勧誘されるまでのルート、成分広告の名義人(a研究会:日本クロレラ療法研究会)と商品広告の名義人(Y:健康食品製造販売会社)との財務的・人的な関連性などが丁寧に分析されており、この観点は大いに参考になる。

 「仕組み」についてだが、本件のような成分広告を見て問い合わせた消費者にY商品購入を勧誘するまでのルートが、はっきりと用意されている場合のみに限られるわけではないでだろう。例えば、同じ広告スペースに成分広告と商品広告を日時を変えて順次掲載するという手法も、掲載の間隔、頻度、レイアウトや表現の特徴の共通性などによっては、消費者から見れば両者一体のものとして「仕組み」があると認められる可能性があると考えられる。また、第二審・上告審が差し止めを否定したことの是非についても議論はあるが、紙面の都合上割愛する。

 

<消費者契約法との関係>

 消費者契約法との関係で言えば、不特定多数向けの広告でも「個別の消費者の意思形成に直接影響を与えるもの」であれば、消費者契約法に基づく差し止めの対象となり得ることが明らかにされた。しかし、いかなる場合に「直接影響」を与えるかの明確な基準は示されていない。

 もっとも上告審は、広告に商品名の記載がなかった本件で、あえて「勧誘」についての解釈を示している。このことからすると上告審は、広告に商品名の記載がない場合でも「個別の消費者の意思形成に直接影響を与える」場合がある、つまり、消費者契約法に基づく差し止めが認められる余地があると考えたものと推測される。

 以上は、消費者契約法に基づく「差し止め」に関する議論だが、これらは消費者契約法に基づく「契約取消」に関する議論にも基本的には妥当するものではないかと考えられる。

 従って、健康食品事業者としては、広告内容について優良誤認表示、不実告知の可能性を指摘された場合には、その可能性の有無・程度、該当するとされた際に生じ得る影響(景表法に基づく課徴金納付を含む)などを慎重に吟味しつつ、差し止めだけでなく、契約取消のリスクも想定した難しい対応を迫られることになるだろう。

(了)

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