健康食品広告・表示の「判例」解説~クロレラチラシ事件(2)

赤坂野村総合法律事務所 共同代表 弁護士 堤 世浩 氏

<研究会チラシの配布主体は誰?>

 クロレラチラシ事件の第一審を振り返る。結論は、X(適格消費者団体)の請求を認容する判決となった。その理由については次の通りである。まずは、景品表示法に基づく差し止めについて、「研究会チラシの配布主体は誰か」という点から見ていく。

 大前提として、研究会チラシの配布主体がY(健康食品製造販売会社)でなければ、Yに対する本請求も当然認められない。この点について第一審は、次に挙げる事実関係に照らせば、a研究会(日本クロレラ療法研究会)はY商品の宣伝広告活動を行うYの組織の1部門にすぎないと認め、研究会チラシを配布した者はY自身であると判断した。

(1)a研究会は法人格を有しない団体である。

(2)Yは研究会チラシの作成配布費用、a研究会によるクロレラ等の広報活動に要する費用を全て負担している。

(3)Yの全ての従業員がa研究会の会員となっており、a研究会はその活動のために独自の人件費を支出していないし、団体としての会計管理や税務申告を行っているわけでもない。

(4)Yは、a研究会が使用するとされている電話番号の回線契約者であり、その電話料金を全て負担している。

(5)a研究会の京都本部はY本社ビル内にあるとされているが、a研究会からYに対して事務所使用料の支払はなされていない。

(6)a研究会富山支部もYの事務所内に設置されている。

(7)a研究会のウェブサイトからa研究会に資料請求すると、a研究会が作成したとする多数の資料のほか、Y商品カタログや注文書も送付されてくる。

(8)研究会チラシに記載された電話番号に従ってa研究会に電話で問い合わせると、Y商品の購入を推奨される。

(9)a研究会はY商品以外の商品カタログを送付することはない。

 つまり第一審は、チラシの名義だけに囚われることなく、誰の意思決定により研究会チラシの作成・配布が行われたかを具体的・実質的に検討して判断した。

 

<研究会チラシは景表法の優良誤認「表示」と言えるか?>

 景表法の優良誤認表示で言う「表示」とは、「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品…に関する事項について行う広告その他の表示」と定められている(同法第2条4項)。そのため、研究会チラシが優良誤認「表示」に当たると判断されるためには、そこにY商品に関する記載がなければならないようにも読める。ところが、研究会チラシ自体にはY商品名に関する記載はない。そこで、研究会チラシが景表法の優良誤認「表示」と言えるかどうかが争点となった。

 この点について第一審は、「景表法による不当表示に対する規制は、商品を購入させるための不当な誘導を社会から排除し、一般消費者の適正な商品または役務の選択を確保することを目的とするから…商品名を表示しない広告であっても、多数の消費者が当該広告で行われた不当な説明に誘導されて特定の商品購入に至るという仕組みがある場合には、当該広告をも景表法の規制対象としなければ」ならないとの考え方を示した。

 その上で、前述した事実関係によれば、研究会チラシに書かれたさまざまな効用に関心を抱いた顧客は、必然的にY商品の購入を勧誘される仕組みが取られていたと認定。研究会チラシは優良誤認「表示」に当たると判断した。

(つづく)

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